アクリル恋模様 (ページ46)

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『無理選べない！きりやん私の分も選んで……』
「え〜、俺も全部食べたい」
『さすがのやんでもそれは無理だよ』

ねえ選んで〜！と彼の腕を揺さぶれば彼は悩みに悩んだ末、みそラーメンの大盛りととんこつラーメンのボタンを押した。

「大盛りで足りるかな……」
『いや足りるでしょ。あ、餃子もあるみたいだよ？』

私がボタンを指させば彼はえっ！と歓喜の声を上げながら秒でボタンを押していた。
相変わらず食のこととなると手が付けられないみたいだ。

席に着いて数分後、番号を呼ばれてラーメンを取りに行けば、トレイに乗った器から湯気が出ていてとてもいい匂いがした。
隣にいるきりやんをちらりと覗けばその目はとてつもなくキラキラしていた。

「はあぁ〜…っ！いただきます！」
『あはは……いただきます』

ぱきっと割り箸を割って手を合わせる。
持ち上げた麺にふう〜っと息をかけて少しだけ冷ましたあとズルズルと啜れば、濃厚なとんこつの味が口いっぱいに広がった。
特にひねりがあるわけじゃないけど、死ぬほどお腹が空いている時こそこういうラーメンが美味しく感じるんだよね。

『おいひ〜！！』
「うう……美味い………」

ほとんど喋らずズルズルと麺を啜り続けるきりやんは至極幸せそうな顔をしていた。

『やん、私のやつちょっと味見してみる？』
「えっいいの！？やったぁ、俺のもあげる！」

先程からちらちらと視線を感じていたのでそう提案してみれば、案の定ニコニコしながら私と自分の器を交換してくれた。

うーん、やっぱりみそもコクがあって美味しいなぁ。多めに盛ってあるコーンも甘くてスープとの相性がとてもいい感じ。気をつけないとスープ全部飲んじゃいそう……

「餃子もあげる」
『え、いいよ。きりやん全部食べたいでしょ？』
「んーん！わざわざここまで着いてきてくれたんだから好きなだけ食べていいよ」
『ほんと？じゃあ1個だけもらっちゃおうかな』

着いてきたっていうか連れてこられたんだけどね、なんて思いながらタレをつけた餃子をぱくっと頬張る。
こちらも皮がパリッとしていてとても香ばしい。ラーメンとの相性も抜群だ。

『んふふっ、幸せだね』
「……そうだね」

もぐもぐと食べ進める私を楽しそうに見つめる視線には気づかないまま、私はラーメンをちゅるりと完食したのだった。