アクリル恋模様 (ページ42)

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「俺の悲しむ顔も苦手だよね？さっきだって俺と同じくらい苦しそうな顔してたもん」
『……だって、それはなかむが』
「そ。俺が悪いよ。でもね、それと同じくらいAが泣いたときの顔に弱いんだよね、俺」

まあ腹立ってたのはAがきんときに頭撫でられて嬉しそうにしてたのが気に食わなかったからだけど！と不満を漏らしながらも彼は私の頬にそっと手を添えた。
涙はもう出しきったからなのかなかむの優しさに絆されたからなのか、完全に引っ込んでしまった。

「ねえ、俺これからはもっともっといい子になるから、また俺の隣にいてくれる？」
『いても、いいの？』
「もちろん。だって俺、ずっと前からAのこと大好きだったんだから」

驚いてばっと顔をあげれば、今まで見たことないくらいふわりとした甘い笑みと、それに似合わないような熱を持った瞳。

初めて知った、なかむが好きな人を見つめるときの視線を。

『……ふふっ、なら明日またたくさん卵焼き詰めてこないとね』
「やった！やっぱ俺Aの作る卵焼きが世界一好きだからなぁ」
『それ昨日も同じこと言ってたよ』

そうだっけ？と笑いながらなかむは私の隣に座り直した。
いつもみたいに、私の隣にいてくれるなかむにこてっと頭を預けてみれば頭上からはふふっと嬉しそうな声が聞こえた。

「心配しなくても、俺はAのことしか見てないからね」

私を落ち着かせるようにそう囁いた彼からの初めてのキスは、ほんのり甘い味がしたような気がした。