アクリル恋模様 (ページ41)

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「返事は、ごめんなさい。先輩とはお付き合い出来ないです」

え？なんで？

私の頭に浮かんだ言葉は、そのまま先輩の口から発されていた。

「ど、どうして？だって、わざわざ呼び出してまで……」
「うーん、簡単に言えば俺、甘い卵焼きよりもしょっぱいのの方が好きなんですよね」

それも、人のお弁当から奪い取った卵焼き！とこの場に合わない元気ななかむの声が屋上に響き渡った。

長い沈黙のあと、そっかとだけ零した先輩は勢いよく屋上のドアを開けて走り去っていった。
何が起きたのかわからなくてぺたんとその場に座り込めば、上からひょこっと影が落ちてくる。

「……えへへ、俺めっちゃ悪いことしちゃった」

私の前にしゃがみこんだなかむはも〜泣かないの！と優しく涙を拭ってくれた。

「嫌なもの見せちゃってごめん。それでもこれは俺なりの誠意だから」

先輩に対してもAに対してもね、と笑う彼の表情はなんだかすっきりとしていた。

でも、そんな事言われたって黒くてもやもやとした霧は晴れなくってぼろぼろと涙を流し続ければ、彼はでもさ？と呟いた。

「こんな悪い俺でも、Aは俺のこと好きでしょ？」
『……え、』
「気づいてないとでも思ったの？俺はAのことならなんでも分かるんだから！」

Aが俺の上目遣いに弱いこととか、ほんとはりんごジュースが好きなのをちょっと子供っぽく思ってることとか……あ、あと撫でられるより撫でる方が好きなことでしょ？それとね____

なかむは私が泣けば泣くほど私に関する情報をぽんぽんと出てきた。
彼から出てくる言葉の数々は私ですら気づかないくらい小さなことばかりで、どうしてそんなに知ってるんだろうって不思議に感じるくらいだ。