アクリル恋模様 (ページ37)

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「でさ〜、昨日の話し合いで俺結構いい案出せてさ！」
『ん〜……』

いつもの屋上で、いつも通りなかむと腰を並べてお弁当を食べる。
でも昨日かわいい時限爆弾を渡されて以来、私の頭はずっと上の空だった。
これを渡したらどうなるんだろう。女の私でもかわいいと思うような先輩だ。そんな人からのラブレターでなかむが喜ばないわけがないのに。

ぐしゃぐしゃにしなかっただけでも褒めてほしい、そんなラブレターをポケットに隠しながらもぐもぐと唐揚げを咀嚼していると、隣から不機嫌そうな声が聞こえた。

「ね〜え！さっきから話聞いてる？」
『聞いてるよお……』
「絶対聞いてないじゃん。そんな悪い子にはこうだ！」
『あ、ちょっと！それ最後の1個だったのに！』

彼はAが悪いもんね！といたずらっ子のような笑みを浮かべながら私の卵焼きをぱくっと一口で頬張った。
あ〜おいし〜！と笑う彼を見ていると、なぜか心が勝手に落ち着いてくる。
なかむはいま私の隣にいて、私だけに話しかけてくれてる。かわいい笑顔だって、明るい視線だって全部私に向けてくれてるんだ。

今だけは私だけのなかむなんだから。

「ほら、等価交換してあげる。口開けて？」
『え、いいよ悪いし』
「先に食べちゃったのは俺だもん。俺の卵焼きは食べてくれないの？」

なかむは自分のお弁当箱から卵焼きを持ち上げながらしゅん、と上目遣いで私を見てくる。
うう、そんな顔されたら断れないじゃん……！

彼から目を逸らしながらもあ、と小さめに口を開ければ召し上がれ！と楽しそうな声と共に口の中に卵焼きが入ってくる。
ひとくち噛めば私のしょっぱい卵焼きとは違う、ふわりとした甘さが口の中に広がった。なかむの卵焼きは昔からいつもお砂糖が入ってて甘めなんだよね。

きっとあの先輩はそんなことも知らないんだと思うと、優越感で頭がふわふわと浮かれてしまう。

「どう？おいしい？」
『うん。なかむの卵焼きは世界で1番おいしいよ』
「いーやそんなことないね。Aが作る卵焼きのほうが100倍おいしいし！」

また食べたいなぁと言いながら空っぽになったお弁当箱を片付けるなかむ。

____どうしよう、渡すなら今しかない。