アクリル恋模様 (ページ36)

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甘さはお好みで/Nkm ページ36

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「なかむくんにこれ渡してくれないかな？」
『はい？私がですか？』

その日はなかむに委員会で忙しいから先に帰っててと言われた日だった。
終わるまで待つよと返したものの、最近暗くなるの早いんだから！と眉を下げられたら聞かないわけにはいかなかった。
どうやら、なかむは私が上目遣いに弱いことを知っているらしい。

小さくて可愛らしい声が聞こえたのは、私が昇降口から1歩外に足を踏み出したときだった。
振り向けばそこには肩まで伸びた栗毛色の髪の毛と、色素薄めのくりくりとしたおめめがかわいらしい、校内でも人気が高いと有名な先輩が。

「あなたいつもなかむくんと一緒にいるよね。幼馴染なんでしょ？」
『……まあ、幼馴染っていうか中学が一緒なだけですけど』

おずおずと先輩が差し出してきたのは水色にハートのシールで封がされた封筒。考えなくても分かる、ラブレターというものだろう。
なかむくんへ、と書かれている字は女子特有の丸みを帯びた文字で、いかにもなかむが好きそうな字だった。

まだ渡すとも言っていないのに先輩はよろしくねっと私に手紙を押し付けてぱたぱたと校内へ戻って行った。

『は〜？……あれが敵とかマジ？』

こんなもん燃やしてやろうか。

まだ明るいおひさまに照らされたラブレターをぼんやり眺めながら、私の口からはそんな毒が流れ出た。