アクリル恋模様 (ページ33)

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だってヒーローはいつも/Nkm ページ33

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暗い部屋の中、更に暗い布団の中に潜っているとコンコン、とドアをノックする軽い音が聞こえてきた。

でもメソメソしているこんな私を、今は彼に見せたくなかった。こんな顔を見せて心配させたくないから、でも布団から出てこないのを心配してほしいから。

そんな矛盾を抱えながらボロボロと泣いていると、ドアが開く音と私の名前を呼ぶなかむくんの声が同時に聞こえた。

「A？どうしたの。体調悪い？」

どんどんと声が近づいてくるけど、返事の代わりに涙で濡れたシーツをくしゃりと握りしめる音しか返すことができなかった。

ああもうやだな、心配されてるのに無視するとか私最低じゃん。こんなことばっかりするとなかむくんに嫌われちゃうかもしれないのに……
彼はぐすっと鼻をすする音で察したのか、ゆっくりと布団の中に手を入れてきた。

「ね、A。身体が辛かったら言って。心が辛いなら俺の手握ってほしいな」

そう告げる彼の声は苛立ちでも、ましてや拒絶でもなく、私のことを温かく包み込んでくれるような色を見せていた。

ここまでされたらもう無視なんてできないな。

それに、こんなにめんどくさい素振りしか見せていないのにも関わらず、ずっと私の心を握ったままでいてくれる彼をこれ以上無下に扱いたくなかった。

私がぽん、と彼に手を重ねると、私が握る前になかむくんの方からぎゅっと力を込めてくれた。冷たくなりきった私の手とは違う、確かな熱を持っている彼の手はそのままするりと指を絡めてきた。

「ふふっ、ありがとう俺のこと信頼してくれて。なにか辛いことでもあったの？」
『……うん。最近頑張りすぎて燃え尽きちゃったの。もう動きたくない、どうでもいいやって』
「うんうん、俺知ってるよ。A、最近は特に毎日頑張ってたもんね」

偉いね、と褒めてくれた彼はそのままスリスリと手の甲を撫でてくれる。
くすぐったいけど心地よくて、ちょっとだけ心の落ち着いた私は布団から目元だけ顔を出した。