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「お会計は1人3000円でーす!」
夜も深くなり、幹事のそんな声と共にえ〜もう終わり〜?といった陽気な声があちこちから聞こえ始めてきた。
……しかし、私にはそんな楽しい時間が終わる切なさを感じる余裕なんてないのだ。
結局あれからずっときんときくんがプレゼントをくれた意図のことしか考えられなかった。
さらには早くプレゼントを開けたいという気持ちと、ここで開けて変にニヤニヤしたくないという気持ちがせめぎ合っていて頭の中はもうぐちゃぐちゃだ。
しかも問題のきんときくんは楽しかったねと私や他の友人と話すだけで、特段変わったところもない。
もしかしてこのプレゼント、みんなにあげてるのかな?実は中身もクッキーとかそんなありきたりなものだったり?いやでも、この箱の見た目と重さからしてクッキーではなさそうだけど、でも…………
お酒のせいで上手く回らない頭を必死に働かせながらも、本心を見せてくれないきんときくんを恨めしく思った私は遠くからちょっとだけ睨みつけた。
「あ、やばい俺店にスマホ忘れたかも」
帰り際に二次会どこ行く?と騒ぐ人たちを遠目で見ていると、ふいにきんときくんはそんなことを口から漏らした。
周りの人はそんな彼に対しておいおいしっかりしろよ〜!などと、肩を組みながらいかにも面倒くさそうな絡み方をしていた。
けど、
『……え、これってそういうこと?』
私は思わずそう呟いてしまった。
なんでって、ちらりと私を見たきんときくんが小さく頷いていたような気がしたから。
『あ、あー……私も忘れちゃったかも』
「ほんと?じゃあ俺と一緒に戻ろっか」
きんときくんは未だ鬱陶しい絡み方をしてくる連中をさっと避けたかと思えば、こんな時間に女の子が1人じゃ危ないからねとどこか含みのあるような笑みを浮かべながら私の隣に並んだ。
「俺達そのまま適当に帰るから、二次会はパスで」
「え〜?きんとき帰っちゃうの?」
「うん。ちょっと疲れちゃったし、彼女も眠そうだから」
なんて言いながらちゃっかり私の肩を引き寄せるきんときくん。
さっき一瞬寂しそうにしてた女の子はそっかぁとだけ残してまた他の男の子の元に向かっていった。いや、あなたみたいなタイプの子って普通こういうとこ見たら怒るんじゃないの!?
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作者名:ふわぴ | 作者ホームページ:http://urana
作成日時:2021年12月1日 19時