アクリル恋模様 (ページ21)

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「……お兄ちゃん、ねぇ」
『あはっ、先輩でもそんな赤くなることあるん、だ……』

先輩が私の目の高さに合わせて屈んだと思ったら、いきなり腕をぐっと引かれた。

完全に油断していた私の頭は、きんとき先輩までの距離があと数センチしかないことに気づけない。

どうしよう、あとちょっとでも動いたら、

「Aはお兄ちゃんと妹の関係だけで満足なんだ？」

____俺は嫌だけど。

そう言いながら近づいてくる先輩を見てようやく動き出した頭は、次の行動を予測して目を瞑れと司令を出してきた。

きゅっと目を瞑っても吐息が、熱が先輩を感じさせてくる。

それくらい、きんとき先輩が近くにいる。

「ふっ、俺より顔真っ赤」
『んぇ……？』

それなのに、私になにかが触れるような感触は何もなかった。
なんで！と少しもやっとしたまま目を開けると、未だに私の前でニコニコしてる先輩と目が合ったことでものすごく気の抜けた声が出てしまった。

「キス、されると思ったでしょ？」

それでもどうやら触覚の代わりに聴覚がやられてしまったらしい。
先輩のいつもより低くて大人っぽい声が、私の耳元で聞こえた。

腰がぞわりとする、顔に身体の全ての熱が集まるのを感じる。心臓は爆発する前にバグってしまったのか、ありえない速さで脈を打ち始めた。

『ぅ、あ……せんぱぃ、ずる……』
「これに懲りたら俺で遊ばないこと。分かった？」

ちょっとだけ後ろに下がって小悪魔っぽい顔をしながら、お兄ちゃんとの約束だよ？と彼は小指を差し出してきた。
もう自分で考えることを放棄した私は無言でぶんぶんと頷いて、私よりも長い指に自分の指を絡めたのだった。