パ パ と 呼 ん だ な ら 。

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「ただいま〜」

間の抜けた声で言う。

どうせ、誰もいないんだから…。


と思ったのに、


「あ、おかえり。聡くん。」


ソファーに座って、音楽番組を見ている“父親”がいた。


「…帰ってたんですか。」


「まぁ、仕事がない日は極力帰りたいし。

明日香さんばかりに迷惑かけるわけにはいけないしな。


それに、聡くんの顔も見たいし。」


「…そうですか、




風磨さん、今日ママは？」



風磨さん。

戸籍上は僕の父親にあたる。

優しくて、悔しいぐらいにかっこいい。
パパを亡くして、路頭に迷っていたママを愛してくれた。


ママは、舞台の上では『無敵』と言われた言わずと知れた大女優。『日比野 明日香』

パパが亡くなって、ママは女優業を休業した。


毎日、寂しい顔をするママを友達に貰ったジャニーズの舞台を見に行こうと言った。
そしてママは、ここにいる『菊池風磨』に一目惚れした。


スムーズに恋愛は進み、そして結婚した。



「『パパ』って呼んでいいからね。
俺たちは、もう家族なんだから。｣



もちろん、僕のパパはこの世で1人だけ。



「風磨さん。」



そう呼び始めてから、もう2年経ったのだろうか。


今更、言えない。




「パパって呼んでいいですか……？」




「…ん？聡くん、なんか言った？

夜ご飯、食べよ？」




もしあなたを、


パパと呼んだなら


この微妙な距離感が何とかなったのでしょうか？

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