気をつけろバカ！ (ページ20)

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少しの恋愛要素ですか！ページ20

｢これあげるわ｣

ぶっちらぼうの典型的なように、｢ん｣と渡されたのはベージュの箱。青いリボンが丁寧に巻かれてあっていかにも高級店の匂いがする。また私に高級なものホイホイ買って餌付けようとするな……。

｢ありがとうございますー｣
｢なんだよ不満かよ｣

ゆっくりと包み紙を開くとまさかのチョコのバームクーヘンだった。チョイスな……。

製品会社の紹介文などが書いているカードを手に取り見ると難しそうな英語が書かれてあった。洒落てるな、と思いパラパラ捲っていくと全ページ英語で読むことは出来なかった。待てよ、これは英語じゃなくてゲルマンっぽい言葉な気がしてきた。

少し嫌な予感がしてグルッペンがいるソファに目を移すと、ばっちりこちらを見ていた。

｢……あっの、もしかして、なんですけど…｣
｢はい｣
｢もしかして、ドイツまで行かれました…？｣

そのまま表情を変えず少し目をつぶった後、ソファから立ち上がって私のいるテーブルまで来た。しっかりと目を合わせられる。

｢あのな、Aバカやから知らんと思うけど、こういう日にバームクーヘン送るって意味があんねん｣

｢うわ…しらない……｣

私がこういうのに弱いということを知っていながら意味がある贈り物をしてくるのがグルッペンだ。くどいし、めんどくさくて調べるのを引き伸ばしていたら溜まって今日のこの日になった。この雰囲気と極めつけのホワイトデー。

｢幸せが長く続きますように｣

そのまま整った顔が近づいてくる。ふわりと香るカッコイイ幼なじみとは裏腹なバニラのような甘い匂い。海みたいな深い青の瞳に溺れて、顔が離れるまで指1本動かせなかった。
触れるだけで静かに離れていったグルッペンを見ているだけだったのに、先程の言葉の意味を思い返して｢うっそ！！！｣と可愛くない声が響く。

｢長年幼なじみとしか見てなかったかもしれんけどそのつもりやで｣
｢…………いや、ちょっとは分かってたけど｣

その割には照れてんな、と笑われる。発熱の時みたいに顔が熱いのでバレバレである。悔しくて右ストレートでも喰らわそうと思っても力が入らなくて簡単に受け止められ、そのまま緩く絡められる。
いい大人なのに、しかも人生の大半を一緒にすごしている幼馴染相手に照れているのが恥ずかしい。

｢Aずっとありがとう。これからもよろしくな｣

柔らかく笑ったグルッペンと、視界の端にあるお揃いの猫とうさぎのマグカップが滲んで見えた。