気をつけろバカ！ (ページ1)

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12月だろ気をつけろ！ページ1

「やばい…」

そう言って隣に静かに並んだのは、同僚のシャオロン。グレーのマフラーを折り畳んで手に持っているのだが、その顔はどこか沈んでいる。
はあああとクソでかため息を吐かれ、これは私がどうしたの？と聞かなければいけない流れじゃないか。

「おはよう、どうしたの」
「これ新しいやつなんやけどな…………タグ切ってなかってん…」

ブッと反射で吹き出してしまうと、おいと小突かれる。
よく見るとマフラーの端に、某服屋のタグがプラスチックの留め具と共にぶら下がっていた。しかも15%割引と赤いシールも貼られている。

寒くなってきたから、生き生きとマフラーを付けてきたのに、結ばれた端にタグがぶら下がっているシャオロンの姿を想像するとじわる。でも、あんまり笑うと本人が可哀想。ポメラニアンとか言われてる彼とポメがしゅんと耳を垂らす姿が重なる。

「12月なんだから気をつけてよ」
「なんやねん、それ。俺が普段こうとか言わんといてくれる！？」

プン！とポメラニアンが湯気を出して怒っている。身長は私より高いのだけど、あまりにも可愛くて笑みが零れた。でも可愛いのは今のうちだからな、絶対に私が先に出世する。
馬鹿にされたと思ったのか「Aサイテ～～やわ！！」と、エレベーターに乗り込む時扉に挟んできた。イタッお前が最低だ。

「あれ、シャオロン手袋も変えた？」
「はあ？変えてへんけど…」

エレベーターの中で、いそいそと手袋を脱ぐシャオロンに声をかける。脱いだ左手は黒の革の手袋。彼がまさに今外そうと右手につけているのは……グレーの毛糸の手袋。
目線が落とされた瞬間、シャオロンの言葉が止まる。私は我慢できずに大爆笑。職場のフロアに着いた時に開いたエレベーター内は、立ったまま腹をよじらして過呼吸の私と、顔を覆いしゃがんだシャオロンの姿があった…。