後輩のつまみ食い【企画】 (ページ30)

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そして、さっき見ていた夢。彼が戦に出てしまう前の日。彼に呼び出されて向かった教会での記憶だ。
その日は一日中晴れで、翌日からの戦に城下の住民は避難だとかに忙しくしていた。もちろん私の家も。
夕方頃、彼が店に現れて、話があると言われて教会まで行った。その教会は、もう誰もいなくて、夕日に照らされたステンドグラスの色が綺麗な白い床に映し出されていた。

「Aさん、俺は、貴方が好きだ。」

彼は私の手を取って言った。

「好きだけど、俺達が一緒になることはできません。」
「……。」
「だから、アンタにこれを預けます。」

そう手渡されたのは、綺麗な細工が施されたシガレットケース。
彼が愛用している煙草が入っていたものだ。

「これは、なくてはならないものではないのですか、」
「だからです。だからこそ、アンタにこれを預けます。戻ってきたら、取りに行きます。」

負けることがわかっているのに、彼は私にこんなに大切なものを渡すのか。もう会えないかもしれないのに。
そう言おうとして、やめた。
私は泣きそうになった。彼の声も泣きそうだった。

「だから、俺のことを信じて待っていて」
「もし駄目でも、来世で必ず貴方を幸せにする。」
「だから、来世で会えたら、そのときは、______」

そう言って、彼は私にキスをした。

ただ1つ、気がかりなことがある。
そのときは、その続きがどうしても思い出せない。
思い出したくても、思い出せない。
だから苦しそうな顔をしていたのだろう。

結局、私達は再会することはなかった。