1.縁と浮世は末を待て ページ3
まさか、ここで出会うとは誰が予想していただろうか。
雲もできるような人の暑さの中でわざわざこんな所まで足を運んでくださってありがたい。お金を受け取りつつ、一人一人にお礼や軽い会話をしながらスムーズにフローチャートを進めていく。お手伝いの友達は好きな作家さんのとこがもう数少ないので、休憩がてら買いに行っていて今は私一人。
「ありがとうございました！今ちょっと多忙でTwitter中々開けてないんですよ〜、はーい頑張りますね！」
冬にまた！と一礼して去っていくフォロワーさん。
当たりを回しても人間人間人間。叫ぶ人もいれば小走りで急ぐ人もいる。皆、TLを確認しながらギラギラと獲物を探す目付きをしている。
そう、ここは戦場。
その中で私は『2センチメートル俺のモノ』とかいう、自分がつけたけどかなりどぎつい本を机に広げ、恥を捨て椅子に腰掛けている。私はそこら辺によくいる(単純にフォロワーが多いBL同人作家を副業としている)ただのOLだ。
こうしてコミケにも毎年出れるのは支えてくれるフォロワーのおかげだなうんうんとかしていると、多分今後一生ないような最悪な瞬間が訪れた。
「『2センチメートル俺のモノ』一部ください」
覇気がない男性特有の低い声が頭上から聞こえ、同時に千円札を差し出される。小銭整理をしていたため反応が遅れたが返事をし、一部手に取りフォロワーさんに渡す。
いや腐男子か〜〜中々に珍しいイかしてるフォロワーと出会えたな。
「ありがとうございま〜〜〜〜マーーッ！？」
「ちょっと原作通り落とさないでくださいよ」
手の力が抜け落としてしまった品を広い大切そうに汚れをはたくのは、同じ会社の、同じ部署の、ショッピくん。
ショッピくん、あのかの有名な仕事が出来て冷静男のショッピくん？趣味は喫煙所っスみたいな男のショッピくん？
いやいや、いや、そんなBLにミリ単位で興味無さそうな仕事人間がこんなコミケに一人で来る訳なんかない。人違い、ドッペルゲンガーか何かと思いながら再度顔を上げて確認する。
「大丈夫ですか、熱中症とか？」
エーーーーーッいやこれ完全ショッピくんじゃん、部下ぢゃんなに？眠たげに垂れた目、ふわふわとした染められた栗色の髪、並行を描く口が心にも思ってなさそうな言葉を並べる。これは、100ショッピくん。
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