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「ショッピ君、起きて」
「充電完了。起動しますね」
首の後ろのプラグを抜いてやり、抱きしめる。おはようの挨拶だ。そう教えれば、ショッピ君は素直に返してくれた。
「Aさんの今日の予定は、食料品の買い出しと秋服の購入、でしたね」
「うん。ショッピ君も着いてきてくれる？」
「もちろん。一緒に行きましょうね」
トーストにバターを塗って、半熟の目玉焼きを添える。ショッピ君は私の様子を対面に座って眺めている。無愛想、な顔であるが、明らかにリラックスしている瞳だった。
「……お昼は、一緒に食べよっか。何がいい？」
「いいんすか？……じゃあ、中華が食べたいです」
甘える時、気が抜けている時、彼は少し砕けた口調になる。この自律式発達手助けロボットには何種類かの性格があるらしく、ショッピ君は後輩、もしくは弟のような接し方だった。
私はカトラリーを置き、ショッピ君の手を取る。彼は何事かと首を傾げる。
「……おはよう、ショッピ君」
ショッピ君の目が揺らぎ、私の言葉の意味の解釈を人工知能が紐解いていく。ほんの数秒後、彼は小さく微笑んだ。
「ええ、おはようございます、Aさん」
*
「ねえショッピ君、どっちがいいかな？」
紺色の膝丈スカートと、鶯色のロングスカートを見せる。ショッピ君は困ったように眉を下げたあと、鶯を指さした。
「どちらも似合ってますけど、僕はこっちが好きです」
「そっか！じゃあこっちにしようかな。あ、ショッピ君も欲しいものがあったら言ってよ」
「いえ、僕には支給品もありますし、念の為のお金もありますので、そんな……」
「私がショッピ君に買ってあげたいの。それだけ。遠慮しないで」
「……優しいんですね。では、欲しいものを探してきます。10分ほどお待ちください」
ショッピ君はミルクティ色の猫毛を跳ねさせながら人混みへ消えていく。その間に私は何着か選び、会計を済ませていく。
さて、近くの中華料理店を探すかとスマホを取り出した時、ちょうど10分きっかりにショッピ君は戻って来た。
「おかえり。何か欲しいものあった？」
「ありませんでした。でも」
ショッピ君は小さな紙袋を私に手渡した。開けろ、ということなのか。その場で開けると、紫陽花色の石が嵌め込まれたシルバーリングが出てきた。
「欲しいもの探してたら、Aさんに似合いそうなものを見つけまして。……どうですか？」
うん、嬉しい。嬉しいよ。ありがとう、ずっと大事にするね。好き、大好き、ショッピ君。
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