2.変わらない愛 ページ8
.
.
幼い頃、結婚の約束をした男の子がいた。
小学生の私と3つほど年の離れた年下のあの子。
お母さん達がリビングでお話している間、2人で私の部屋で遊ぶのが楽しみだった。
その日もお母さん達が楽しくお喋りしている間、2人で遊ぶ事に。
でもその日はその子の様子がちょっと違くて、何かを背中に隠して私のところへ来た。
「こっち、来て。」
誰も居ない部屋、腕を引かれて窓際のレースカーテンの中へ。
その中はちょっと不思議な空間で、真っ白なレースを通して暖かいお日様の光が降り注ぐ。
お庭の緑や花の色も透けて、今なら言葉にできるけど幻想的だった。
そのレースカーテンをまるでウェディングヴェールの様に頭にかけられ、小さな手で私の左手を取った。
その左手の薬指に、きっと大切なお小遣いをはたいて買ってくれた大きな紫の飴の指輪、私が当時葡萄が好きだったからそれだと思う。
私はキラキラお日様の光を反射するそれを綺麗！嬉しい！と見つめる。
すると目の前の子が顔を真っ赤にして言った。
「……僕、大きくなったらAちゃんのことお嫁さんにするから！やから、それまで僕の事待っとって！」
小学生にして、初めてされたプロポーズだった。
当時、純粋だった私は元気に うん！ と頷いたのを覚えている。
その次の日、その子とその子の家族は遠くへと引っ越して行った。
私は貰った指輪の飴の台座を握り締め、わんわん泣き喚いてたと思う。
お母さんが言うには、その日は引越しのご挨拶だったんだって。
私には自分で言いたい！と言っていたらしいがきっと言えなかったのだろう。
え？なんでこんなに曖昧な話なのかって？
そりゃあ、ねえ、10年以上も前の話だし。
こうして、私は中学、高校、大学と無事に進学し立派な社会人となった。
その間、1度や2度は告白とかもされた事があるけどその度にあの子のプロポーズが頭を過ぎってそんな気にはなれなかった。
今考えるとまだまだ子供だった2人の約束、あの子も忘れているのかもしれないなあ。
そもそも覚えていたとしても、そんなのまだ信じてたの？と言われるかも。
それでも、家にある宝物入れとかいう女の子らしい箱の中には、あの時貰った飴の台座が未だに大事に大事に保管されている。
どうしてって、なんとなくかなあ。
『……行ってきます！』
そんな宝物入れに元気を貰って今日も頑張って出社するのだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 199人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
