157．……本当にわかってんのか？ ページ7
「ぁ……」
重い足取りで帰宅していると、前から見覚えのある姿が歩いてきたことに気がついた。最近話すことの減った隼人が見えて声をかけるべきか迷い、俯いて知らないふりをする。
すると、彼は「A」と駆け寄ってきた。立ち止まると隼人は「やっぱりAじゃねーか。何やってんだ？」と不思議そうな表情を浮かべる。
「……んー、別に。散歩してたの」
「……ふーん」
「隼人は？」
「俺は10代目の家の周り警備してんだよ」
なにそれ、なんて笑いながら彼の顔を見上げる。隼人は「10代目が命を狙われたんだ」と綱吉の家を眺めながら言った。「マフィア関係なんでしょ？聞いたよ」そう言うと軽く目を見開きながらも彼は頷く。
「てめーも顔が知られてるかもしれねぇから、できるだけ1人で出歩くんじゃねーぞ」
「うん、わかった」
「……本当にわかってんのか？」
即答した私に呆れたように笑った隼人。そのまま軽い無言が続き、彼が動いた気配がした。帰ってしまう気がして「今日、ご飯一緒に食べない？」と慌てて声をかける。
すると考え込んだように「バイトで遅くなるからいーわ」と誘ってくれたことに対する礼を言われて言葉につまった。
「……そっか」
「何があった？」
“何が”と訊いてくるところが隼人らしい。心配そうな顔をしている彼の頭には綱吉が浮かんでいるのだろう。私がさっきマフィアのことを誰かから聞いたなんて伝えたのだから。
＿＿『俺達これからもずっと幼馴染として2人で一緒にいられるよね？』
そう綱吉に言われたことを、隼人に言ってもいいのだろうか。この気持ちをどうしたらいいのかと、不安でたまらないと、今までのように彼を頼ってもいいのだろうか。
「何もないよ。親がいないのに食材買いすぎただけ」
「……」
「コンビニだったよね。無理しないようにね」
私が何も言うつもりはないと察したのか、隼人は「さんきゅ」と笑った。ばいばい、と声をかけると「送る」なんて言って彼は前を歩く。
“すぐそこだよ？”と言いかけて、前にも家まで送ってくれようとした綱吉に伝えたことのある言葉だと気付いて声に出すことをやめた。そんなとき、ボヨンと跳ねて目の前を何かが勢いよく通り過ぎる。
「なっ、SIT・P！何の儀式をしてるんだ……」
そわそわと彼女を目で追う隼人に「行ってきなよ」と笑いかけると、彼は私の家としとぴっちゃんを交互に見て「悪い、また連絡する！」と走り去っていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 203人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：√A | 作成日時：2023年7月6日 19時
