【REBORN】最高の幸せ 4【沢田綱吉】 (ページ48)

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198．絶対、そんなことないよページ48

立ち止まる綱吉を見ていられなくて、炎真は「そんなことないと思うよ！」と慌てて声をかける。

だってAの好きな人はツナ君なんだから、と心の中で続けた言葉はなんとなく口に出せなくて「……絶対、そんなことないよ」と言い聞かせるように小さく呟いた。

そんな炎真の気持ちを知らない綱吉は、彼の優しさを素直に受け取る。自分は、ずっと感じていた気持ちを誰かに聞いてほしかったのだろうか、とも思えた。綱吉はいつも、どこか自分と似ている炎真に笑いかけられると隠していたはずの自分の弱さを見せてしまうのだ。

「Aに彼氏ができないのは俺のせいだって言われて、言い返せないくらい納得しちゃったんだ」

そう、今思えば、俺達は家族よりもふたりで過ごす時間の方が多かった。特にAのお父さんが亡くなってからは、彼女の母親の仕事上、沢田家に預けられることが大半で、俺の隣にはいつもAがいた。

普段はゲームや学校のくだらない話ばかりだけど、何度か恋愛の話になったことがある。そのとき、Aは『綱吉がいるから、彼氏は作らないよ』と笑った。

どこまでも幼馴染の俺を優先してくれる彼女を誰にも渡したくなくて、常にAを自分の側に繋ぎ止めておくには“幼馴染でいること”が最低条件だと思っていた。

だって、Aは高嶺の花だから。
幼馴染じゃなかったら、存在を認識してもらえないだろうし、直接笑いかけてもらえないだろう。だからいつも俺は、“幼馴染”という関係のおかげで彼女の側にいることを許されているような気がしていた。

「幼馴染としての関わり方しか知らないのに、Aが俺から離れていったとき、どうすればいいのかわからなくて」

「だから、幼馴染って言い聞かせてないとさ、俺……」と続けた綱吉に、炎真は何と答えるべきか必死に考えていた。

Aから向けられた恋愛感情を否定する綱吉に、彼女から聞かされていた彼への想いを再度伝える勇気は炎真にはない。

「……僕は無理に離れなくてもいいと思うよ」
「そう、なのかな」

不器用な彼等の気持ちを知っているのは自分だけ。綱吉やAの気持ちを知れば知るほど、入る隙もない二人の絆の深さを再認識させられる。

＿＿＿＿羨ましいなぁ、僕はただの友達なのに。

一瞬でも浮かんだ思考に炎真は思わず目を見開いた。先程から息苦しくて襟元を緩めているというのに、張り裂けそうな胸の痛みはとれない。……一体、僕はどうしてしまったのだろう。