182．お願い ページ32
私の嫌な予感は当たっていた。
放課後、京子と2人でクロームちゃんのアパートにお見舞いに行くと彼女の顔色が悪いことに気がついた。見たこともないくらい具合が悪そうで、慌てて並盛中央病院に連れていくと即入院になったのだ。
「内臓が見当たらないなんて……そんな」
「クロームちゃん……」
「……、ス」
どうしよう、と彼女の命の危機を感じて震えた指先を擦りあわせているとクロームちゃんの微かな声が集中治療室に響いた。「京子、クロームちゃんが何か言ってる！」と2人で駆け寄ると、彼女は震えた声で何度も“ボス”と綱吉のことを呼ぶ。
「わかった、待ってて」と言って病室を出ていった京子を見送り、そっとクロームちゃんの手を握りしめた。綱吉がどこにいるのかもわからないとなると、ICUに来るまでに時間がかかるだろう。
早く来て、綱吉。不安感を拭いたくて綱吉のことを考えていると「クローム！」と焦った彼が入ってきた。
「……ボス、私をチームに入れてください」
「でもそんな体じゃ……」
「お願い」
“チーム”と聞いてマフィア絡みだと察した私は、綱吉のクロームを心配する態度に何も言えなくなる。それにしても、彼はこの病院にいたのだろうか。……やけに早かったような。
重々しい空気遮るように「どいてください！」と慌ただしく複数の医者が現れ、クロームの容態を確かめる。内臓が無いのは異例だ、信じられない。そんな時折聞こえてくる言葉に彼女の状態の深刻さが嫌でも伝わってきた。
「ツナ君達はどうしてここに？」
廊下に出された私達は、行き場のない感情を抑えるようにして立ち尽くす。「誰かのお見舞い？」と口を開いた京子の言葉に、綱吉は「炎真達がここに運ばれたんだ」と言った。
「何かあったの？」
「……ちょっとね」
「……容態は？」
「命に別状はないって」
「そっか」と呟いて俯く。感じていた嫌な予感がまた当たったと思った。「今日は面会時間も過ぎてるから会えないね」と言った京子の言葉を聞いて「じゃあ俺行くね」と綱吉が背中を向ける。
その後、京子は迎えに来た了平さんと共に帰ってしまい、一人になった私はゆっくり暗い夜道を歩いていた。暗くて怖いな、なんて考えながら頬を撫でる冷たい風に目を細める。
「奈々！」
ふと沢田家から何かを破壊するような騒がしい物音と共に瓦礫が飛んできた。何が起こっているの、と覗き込むと大量に血を流して倒れこむ家光さんが見えて呼吸が止まった気がした。
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作者名：√A | 作成日時：2023年7月6日 19時
