【REBORN】最高の幸せ 4【沢田綱吉】 (ページ28)

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178．まだ、好きだよページ28

ふと身体を起こしたAは、昨日帰って来てそのままソファーで寝たことを思い出した。窓の外は薄暗く、登校時間までは暫くあるらしい。

シャワー浴びよう、と準備をしながら「ふ、わぁ」と欠伸する。内容は思い出せない夢の続きがみたくても、頭が先に冴えてしまったせいで二度寝はできなかった。

「……変じゃなかったかな」

あの日、綱吉の本心を盗み聞きしてしまってから彼に会うのが怖くなった。“幼馴染以上の関係”が嫌だから、“幼馴染のままでいたい”と遠回しに言ってくれていたのに。『幼馴染って何？』と告白する前に自分が言った言葉を思い出して、自分勝手にもほどがあると落ち込んだ。

これからは、彼の望む“幼馴染”としての態度で綱吉と接しようと決心したものの、気持ちは晴れないまま。笑顔も心がけたし、声をかけられたらすぐに返事もした。特に変な行動はしていないはずだ。

「……炎真、なんであんなに優しいんだろう」

ふと、コンディショナーを髪の毛に揉み込みながら思わず固まる。私は最初、綱吉に似ている炎真と仲良くなれば、胸にぽっかりと空いた穴を埋めてくれるような気がして彼に近付いた。

だけど、仲良くなって炎真と綱吉は別人だと実感することも多くて、今では“綱吉の代わり”ではなく、ちゃんと“大切な友達”だと思ってる。炎真は弟のような可愛さもあって、私が悲しいときには不器用なりに寄り添ってくれた。この間の休日も一緒に遊んでくれたし……。

「炎真と友達になれてよかったなぁ」

優しい友達に恵まれて幸せ者だと思わず笑みが溢れる。シャワーを浴び終えて髪を乾かしていると『今日うちのクラスにまた転入生来るらしいよ！』と花からメッセージが来ていることに気がつく。

「こんな時期に珍しい」

またマフィアかな、とクスクス笑いながら『どんな子だろーね』と返して制服を手に取った。

もしも可愛い女の子が来たら、綱吉がデレデレしそうだと考えて一瞬手が止まる。その子と両想いになったらどうしよう。どんな生徒が来るのかも知らない癖に不安が一気に押し寄せた。

「まだ、好きだよ」

忘れたいはずの綱吉の笑顔を思い出して座り込む。

好きでいるだけなら楽しいのに、恋が叶わないとこんなにも辛いなんてあのときは知らなかった。恋愛感情が理解できないと言った炎真のことが少し羨ましい。

自分の好きな人のことを皆が好きになると考えてしまうのは、恋愛特有の悩みなのかと自嘲気味に笑った。