【REBORN】最高の幸せ 4【沢田綱吉】 (ページ22)

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172．…………僕と？ページ22

「じゃあ、また来週」
「うん、ばいばい」

家に入るツナ君の背中を眺めながら先ほどの出来事を思いだす。

＿＿Aが僕達の会話を聞いていたかもしれない。
どこから聞かれていた、なんて考える暇もないくらいの動揺。顔面蒼白という言葉がしっくりきてしまうくらい、目の前に座るツナ君と僕は同じ顔をしていたと思う。

「……僕って、嫌な奴かな」

“Aのことは、もうなんとも思ってないの？”と何気なく確認したときのツナ君は、今まで見たことのない表情をしていた。

無意識に向かっていた河川敷。Aがいるはずもないのに、勝手に期待して来てしまった。猫の餌は今朝あげたし、と帰るつもりでなんとなく橋の下を一瞥すると、誰かがいることに気がつく。

ぼんやりと見えた後ろ姿で今まさに考えていた彼女だと理解したときには、足が自然とAへ向かっていた。

「A、来てたんだ」
「炎真、よくここがわかったね。影になってたのに」
「帰る途中でたまたま目に入っただけ」

顔をあげたAの目は充血していた。さっきまで泣いていたと確信してしまうくらいに瞼が赤く腫れているものの、彼女は触れないでというように「炎真は放課後何してたの？私は図書室で課題してたよ」と笑う。

……知ってるくせに。そう思いながらも「今日の放課後までに反省文の提出しなきゃいけなかったから、教室で居残りしてたんだよ」と隣に座った。

いつもは芝生に座っているからか、橋の下の冷たい砂利の上は慣れなくて落ち着かない。

「じゃあ提出できたんだね。お疲れさま」
「……ありがとう」

鼻声で無理して笑って見てる方が辛くなるようなA。こんなとき、ツナ君だったらAのことを簡単に慰められるのだろう。だって彼女の好きな人は＿＿。

「炎真は最近できた隣町のショッピングモール行ったことある？」
「クラスの人が話してたのは聞いたことあるけど」
「明日一緒に行かない？」
「…………僕と？」

膝を抱えた姿勢で、ローファーの爪先を眺めながらAは言う。「明日からの休日、独りぼっちでいたくないの」続けて弱々しく呟くAの声は震えていて、顔は見えないけど涙を我慢しているのは一目瞭然だった。

「…………いいよ。どうせ暇だったから」
「ありがとう、炎真」

泣いてもいいんだよ、とAの背中を擦りかけた右手を咄嗟に左手で押さえた。君が誰のことを思って泣いているのか、察してしまう自分が嫌になる。