【REBORN】最高の幸せ 4【沢田綱吉】 (ページ19)

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169．一緒にいた時間が長すぎたページ19

朝から疲れた、と壁掛け時計を見上げる。放課後になり、家に帰る気分にもなれず図書室で時間を潰すことにした私は、今日の課題に手をつけていた。

スラスラと計算問題を解いていると、ふと前に綱吉が教えてほしいと言ってきた問題に酷似している文章が目に入り手が止まる。

確かあのときは解説しても綱吉がなかなか理解してくれなくて大変だった。彼は自分には無理だと判断するのが早くて、すぐに諦める癖があったから。＿＿なのに、高嶺の花だと認識して諦めかけてた京子に告白したのは何故だろう。

「恋愛になると性格変わるのかな」

綱吉との楽しかった思い出に自然と上がった口角が徐々に下がる。考え事に集中していて、無意識のうちに描いていた落書きを慌てて消そうと筆箱の中を漁ったが消しゴムがない。

はぁ、とため息をついて教室に戻るために立ち上がる。友人に貸したあとに自分で机の中に入れたことを忘れていたのだ。

図書室を出て廊下を進むと、教室に人の気配を感じる。誰かがいるのならと入るのを躊躇った瞬間、聞き覚えのある声が聞こえて思わず足を止めてしまった。

「Aとは、一緒にいた時間が長すぎたんだよ」

はっきりと聞こえた自分の名前に肩が揺れる。綱吉の声だった。突然のことで理解できずに立ち尽くしていると「ずっと一緒にいると気持ちも変わるんだね」と炎真の声がして慌てて扉の影に隠れる。

綱吉の言葉は嫌な意味で私の胸に突き刺さった。一緒にいる時間が多かったから私が嫌になったのかと。恋愛対象として考えられるわけがないと遠回しに言われているようで、上手く息が吸えない。

「それに、Aには獄寺君と付き合ってほしいって思うから」

どうして私はここにいるのだろう。綱吉の言葉が、頭の奥深くまで響き渡る。最近は泣きそうになっても我慢できていたのに、ポロポロと目からこぼれ落ちる涙は止められない。

「……ほら、2人は周りから見ても美男美女だし、仲もいいし、すぐにお似合いなカップルって噂になるんじゃないかな！」

喪失感が一気に押し寄せて罪悪感で胸が苦しい。

やっとわかったよ。今までごめんね、綱吉。
振られたのに諦めが悪くてごめんね。
まだ綱吉のことが好きでごめんね。
“これからも幼馴染でいられるよね”って、遠回しにずっと友達でいたいって言われてたことに気付けなくてごめんね。

＿＿私からの好意が嫌なら、直接“そんな感情を向けられても迷惑だ”って言ってくれてよかったんだよ。