166．……ツナ君が好きなんだね ページ16
「綱吉は何か言ってた？」
「え、ツナ君？」
焦りを隠しもせずに不安感の強い表情を浮かべるA。幼馴染とは、こんなにもお互いのことを気にする関係なのかと驚きつつもツナ君の様子を思い出す。
「告白の返事、気にしてたよ」
「ほ、本当？」
そっか、と複雑な表情をしたAが「告白されてるときに去っていく2人の後ろ姿を見た気がしたんだけど、やっぱり断ったところは聞いてなかったんだね」と俯いた。
綱吉に直接言うのは勇気がいる、と呟き伸びをして芝生に倒れこむ彼女に「僕が伝えておこうか？」と言うと、Aは驚いたように勢いよく身体を起こした。
「いいの！？」
「いいけど」
「すごく助かるよ炎真……。ありがと！」
「うん」とAに言いながら猫達がじゃれあう様子を眺めていると、彼女は「ねぇ、しとぴっちゃんって隼人のこと好きなの？」と僕に質問を投げかける。そんな突然の獄寺君の話題に、先ほど考えていたことを思い出した。
「わからないけど、しとぴっちゃんは彼のこと気に入ってるみたいだったよ」
「へぇ、そうなんだ」
そう頷いた彼女に思わず「もしかして、前に言ってたAの好きな人って獄寺君？」と訊いてしまう。するとAは、驚いたような顔をして「ううん。隼人は……私の大切な友達」とどこか遠くを見ながら呟いた。
彼ではないなら山本君なのかな、なんて考えているとAが突然「……私と綱吉は幼馴染なんだけど」と口を開く。
「私は幼馴染じゃなければよかったって思うの」
「どうして？」
「もっと違う出会い方をしてたらって何度も願ったことがあるから」
その様子を見ていると、嫌でも“考えるだけで胸が苦しくなっちゃう人”が誰を指しているのか理解できてしまった。
一気に押し寄せた感情を誤魔化すように「……ツナ君が好きなんだね」と言葉にすると、Aは少しの沈黙のあと「振られたけど、まだ忘れられなくて」と笑う。
「……告白したの？」
「うん、でも振られちゃった。綱吉は京子が好きだから」
私はただの幼馴染だよ、と呟いた彼女に僕は何と声をかけるのが正解なのかわからなかった。
さっきツナ君と話したとき、彼は『Aが好きだった』と言っていた。でもそれは過去形で、笹川さんに告白したことも聞いたし……。失恋した相手はツナ君なのかと動揺しつつも、泣きそうなAの顔を見たくなくて「まだツナ君と笹川さんは付き合ってないよ」と呟く。
「大丈夫だよ、A」
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作者名：√A | 作成日時：2023年7月6日 19時
