108．未来では付き合ってたんだって ページ8
「待って、何で言ったの！？」
動揺が隠せず思わず隼人の腕を掴む。申し訳なさそうに俯いていた彼は、暫くすると突然「10代目にこれ以上嘘つけるわけねーだろ！」と声を荒らげた。これ以上という言葉に反応すると我に返ったように「……っ、んでもねーよ」と言う彼は、少し思い詰めているように感じた。
「……綱吉」
「……」
綱吉は私が知っていたと聞いて何を思ったのだろう。騙していたと、全て知った上で嘘をついていたとショックを受けたのかな。だけど私もマフィアだって知らなかったし、なんて心の中の複雑な葛藤が渦巻くなか隣にいる隼人が気になった。
……辛そうな表情。ボイコット、白蘭との戦い、他にもたくさんのストレスを抱えているのだと思う。私が彼女だったら癒してあげられるのにな。
「ごめん、急に大声だして」
「別に」
「……私、自分勝手なんだよね」
隼人が話さないのをいいことに「……はやく大人になりたいなぁ。こんな未来で言うことでもないんだけど」と独り言をもらす。恋愛も友情も、誰も傷つかないような、誰もが幸せになれることはないのかなぁ。大人になれば幸せになれるという、いつの日か願った漠然とした望みはいつ叶うのだろう。
もやもやとした感情に加えて、逆上せて火照った頬の熱が消えない。はやく冷めないかな、なんて壁に凭れて手で顔を扇いでいると「ん」と目の前に手が差し出された。
「何？」と口に出そうとした瞬間、差し出されていた冷たい彼の手の甲が片頬に無理やり当てられる。ひんやりして気持ちいい。ぼーっとそんな隼人を見上げながら「ありがとう」と口に出した。
「……ここ、なんか風吹いてる気がする」
「気のせいだろ。外ちけーから」
「隼人の手、冷たくて気持ちいい」
「わざわざ口に出すもんじゃねぇだろ……」
告白される前と同じように接する私は隼人にとって残酷なのかもしれない。綱吉とはよくギクシャクしてしまい、辛い思いをした私の気持ちに寄り添ってくれたのはいつも隼人だった。なのに、どうして私は隼人を恋愛対象として見ることができないのだろう。どうして、彼を傷つけてしまうのだろう。
「……ねぇ隼人、知ってる？」別に何かを期待して言ったつもりも期待させるつもりもなくて、ただすんなりと口に出してしまったその言葉。我に返ったときには既に遅かった。
「＿＿私達、未来では付き合ってたんだって」
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作者名：√A | 作成日時：2022年8月22日 13時
