4．風呂の誘い方 ページ6
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やすだしょうた が きんぱつ の ころ の はなし
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潮風に吹かれて髪の毛がパサパサしてきた気がする。
何の気なしに奴の横髪を触ると、こっちは弄りすぎて傷んでいた。
んー？とこちらを向く奴はやけにニヤニヤしている。
「なんで、海なんか来たんやっけ」
え？と苦笑いをしながら髪の毛をいじっていた俺の手を掴む。
「いや、なんもないわ。」
ただの独り言。
あの日からそれなりの時が過ぎていき、世の中は変わっていった。
当たり前が当たり前じゃなくなり、普通は普通じゃなくなり。
新しいものが生まれ、古いものは捨てられて行く。
感傷的にいえば、諸行無常、盛者必衰のなんとやら。
…ガラにもないな。
でもこうして、何をする訳でもなく、砂浜に座り込んで、ちんたらも出来るご時世になった。
何にも縛られずに、何にも囚われずに。
「そろそろ帰ろうや。」
帰る？
「おん。潮風にあたっとったらベタベタしてきた。」
風呂入りたいしな…。と、それとなく示唆する。
あー…せやな…帰ろっか。
なんとなく納得してくれたようだ。
立ち上がり、砂を払う。
ふと見えた物憂げな顔。
なぁ、俺らはさぁ、どんくらいのひとに影響与えられたんかなぁ。
「？」
座ったまま、遠くの方を見つめる奴。
「…さぁ、な。」
あぁ、早く帰ってシャワー浴びたい。
ベタベタが嫌悪感になる。
渋やんは、海の向こう側で、何見てきたん？
「…」
何見たんやろ。
俺が見たものは、なんやったんやろ。
何の為に、海の向こう側に行ってきたんやっけ。
「…なぁヤス、はよ帰ろうや。」
ねぇ、渋やん。
俺死ぬんなら水に溺れて死にたいなぁ。
「…アホ抜かせ！」
思わず頭をはたいた。
「ほら！帰んで！」
腕を引っ張り、無理矢理立たせる。
あ、ちょっと、
「もうええから。」
もうええから、だからさ、
そんなこと言わんといて。
俺から、いなくならんで…
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作者名：Haru | 作成日時：2018年6月28日 19時
