・ ページ13
✿
『もしもし?』
[貴方、今日は何時?]
いきなりそこか。
相変わらずだな。この母親は。
『そうだな、晩、いい?』
[ええ。仕方ないわ。もうすぐだもの。]
『了解。そっちは?』
[そうね、二人かしら。待つ訳にもいかないしね。]
『待たせているから、切るよ?』
[そうね。ちゃんとやるのよ?]
『分かってる。じゃあ、また。』
ぷつり。電話が切れた。
え?如何云う事かって?
うちの家は主語というか、言葉がほぼない。頭の体操としてらしいけど。
お陰様で人の様子だとか声色とかから察せられるように。
因みに先程のはこんな感じ。
[貴方、今日は何時“帰るの?”]
『そうだな、晩、“ご飯、食べてきても”いい?』
[ええ、“時間だし”仕方ないわ。もうすぐ“暗くなるん”だもの。]
『了解。そっちは“晩御飯どうするの”?』
[そうね、“蒼音と”二人“で食べよう”かしら。“貴方やお父さんを”待つ訳にもいかないしね。]
『“友達を”待たせているから、“電話”切るよ?』
[そうね。ちゃんと“迷惑掛けずに”やるのよ?]
『分かってる。じゃあ、また“帰る時に電話するよ”。』
あれ、此れ凄い怪しくないか?
ぱっと見、黒い人たちの任務上の会話みたいである。
真逆、聞かれていないよな?
あたりを見渡すが、誰もいない。良かった。
『すみません、遅くなりましたね。』
「いえ、そんな事ないですよ!」
『ふむ……晩御飯としてのお勧めはありますかね?
毛利さんらは良くいらっしゃるのでしょう?私、しっかりとした食事は頼んだ事が無くてですね……』
「そうですね……どれも美味しいんですよ!晩御飯かぁ……」
沢山悩んでくれる毛利さん。優しい。
どれにしようか。
「お悩みですか?」
『わっ。』
「えっ、今Aさん驚きました?」
『え、ええ。まぁ。』
「驚いても真顔なんだ……」
『はは、本当に動かないんですよね。顔。』
「えっ、す、すみません!」
はは、本当に動かない。
ここまで動かないとなると、演技辞めた時、本当に動かなくなりそうだ。
『大丈夫ですよ。えーと……』
「榎本梓と言います!もしお悩みでしたら、カラスミパスタがお勧めです!」
カラスミパスタか……
確か榎本さんの特製だっけな。
✿
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←・
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ヨルノ | 作成日時:2023年7月10日 17時