この恋を知るまでは（SK）

９ ページ9

５人でとりあえず場所の候補調べて、下見の日程を決めて、解散。
エマちゃんがササッとシゲのところに来て、なんか話して一緒に教室を出て行った。
なんだろう。
別になんでもいいんだけど。



恋をするのは素敵だけど、そんなに必死になる？そんなに一生懸命きっかけ作って２人でいたい？
…よく恥ずかしくないなー。
必死すぎてこわいよ。嫌な感じ。



下見の日。
香也子が寝坊して、間に合わないからごめん、て電話が来てレンタカーの都合もあるし置いていくことになった。
竹志が泊まってたみたい。


下見だけだし大丈夫だよ、って電話を切ったら、伊野尾くんがすこーし不機嫌そうな顔してる。

「…香也子さん来ないんすか」
「うん、なんか、今起きたみたい」
「…彼氏と一緒っすか。ヒゲで眼鏡の」
「そうそう、無駄におしゃれな彼氏」
「………ふーん」



レンタカーの車内はシゲが運転席。
助手席にエマちゃん。
後部座席に私と不機嫌な伊野尾くん。

香也子との電話を切ったらもうエマちゃんが助手席に乗ってた。
別にいいんだけどね。
上座って、知ってる？
乗用車とタクシーじゃ上座の位置違うんだよ？

………別にいいんだけど。



シゲのすべるような運転。
なめらか。ガクン、てならないの。
運動神経と運転のセンスは関係ないんだな。

斜め後ろから見えるシゲのえりあしが前よりすこしのびてる。



助手席のエマちゃんの助手ぶりはとにかく熱量がすごくて、シゲの好きそうな物を隣でハイって渡したり、ニコニコ話しかけたり。
シゲがその銘柄のガムが好きとかよく知ってるな。私たちにもついでに回してくれる。



伊野尾くんが私にちょっと体を傾けてひそひそ小声で聞いてくる。

「Aさん」
「ん？」
「香也子さんて彼氏と長いんすか〜？」
「いつからだろ、一年の夏？アレ？夏前かな？」
「ふーん」
「いや、でも、私伊野尾くん応援してる。すごいダメ男なんだよ、竹志」
「…え？」
「好きなんだよね？香也子」
「……え？」

半笑いでしらばっくれてるのがおかしくて思わず笑う。
笑ってる私を見て、伊野尾くんも綺麗な手を口元に近づけて、へらって笑う。

10→←８(10/23)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す