この恋を知るまでは（SK）

19 side SK ページ19

駆け寄って、重い段ボールを受け取る。

「わり」
「いえいえ、ふう、ありがとうございます」
「いいのに、俺運んだのに」
「ゆっくり歩けば持てるかなぁって思って！すみません。荷物もう一個あるのでまたいってきます」
「大丈夫？」
「はい！」


エマちゃんと別れて段ボールを持って車まで行ったら、Aはもう後部座席に早々に乗り込んでた。


後ろのトランクに荷物を積みながら、Aに声をかける。

「A、前乗れば？」
「大丈夫」
「酔うでしょ？」
「ううん、大丈夫」
「帰りも山道だし」
「いいから、大丈夫だから。エマちゃんだって酔うんだから」


イライラした声で拒否されて、たじろぐ。
そんな話し方、するっけ？
ていうかエマちゃんが何。



来た時と同じ席順でレンタカーに乗って、出発。

車内ではエマちゃんが何かと話しかけてきたり、ガムとかを手渡してきたり。
楽しかったですね、ってあまーい声で延々話しかけられて胸焼けしそう。

できることなら黙ってていただきたい。
慕ってくれてるんだろうし、悪い気はしないんだけどね？
Aに変な風に思われたくねーじゃん？
バックミラーでちらっと確認すると、見えるのは真ん中に座る香也子の頭だけ。

A。
どんな顔してる？
何を考えてる？


「加藤さんて、オムライスの玉子はトロトロ派ですか？しっかり派ですか？」

またエマちゃんが楽しげな声で話しかけて、ハイってキャップを開けたジンジャーエールのペットボトルをこっちに渡してくる。


受け取りながら、内心だんだんイライラしてくる。
しらんがな。
黙ってて。ていうかなんで助手席いつもあなたが乗るわけ。Aを乗せたかったのに。毎度毎度わけわかんねーけど死守しやがって。


心の中で毒づきながら、すごいことに気づいてしまった。


Aも、俺のことそう思ってるんじゃない？


Aが小山さんを好きなのを知ってるのに。
集まりでも飲み会でも、毎度毎度Aの隣を死守してきた俺とエマちゃん、何も違わない。


懸想してきた期間を捨てられなかったてめえ可愛さで、Aを傷つけてきたのかも、イライラさせてたのかも、って気づいたら苦しくなってくる。


ジンジャーエールのペットボトルを、俺が飲み終わるのを見計らって、エマちゃんがさっと引き取ってキャップを閉めてる。
口に含んだぬるいジンジャーエールの甘ったるい味が下の上に残って、イライラした。

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