この恋を知るまでは（SK）

12 ページ12

数週間経って、冬合宿の日。
担当ごとに買い出し行ったり準備してたから、シゲと会うの久しぶり。
そもそも学部も違うし。



現地集合だからそれぞれ学年ごとに仲のいいグループとかで車出したりして来ることになってる。
小山さんと伊織さんのお名前、参加名簿にあったな。
久しぶりに会えるな。


幹事だけでちょっと早めに着くように、この前みたいにレンタカー借りてきた。
昨日エマちゃんとシゲがフライングアルコール組のためにいろいろ買い出ししたやつを積んで、出発。



助手席にエマちゃん。
後部座席で伊野尾くんと香也子と私。


伊野尾くんは、エマちゃんほど表情に出る感じではないけど、隣の香也子と話せてうれしそう。たまに伊野尾くんの裏声で「まーじっすか」って聞こえてくる。

前ではエマちゃんがシゲと映画の話してる。
「えー」とか「すごーい」とかエマちゃんのあまーい声。



この前は平気だったのに、後部座席の端っこで１人黙ってたら気持ち悪くなってきちゃった。


目を閉じて、深呼吸して逸らす。





旅館について、車を降りる。
うう、気持ち悪い…


エマちゃんも助手席だったのに酔ったらしく、シゲにつかまってる。
エマちゃんがレンタカーを降りて、よろっとしたとこをシゲが支えてる。


その時、隣に黒いSUVがスーッと停まって、中から小山さん達が降りてきた。
ああ久しぶりの小山さん。素敵。まぶしい。


……だめだ気持ち悪い。
思わずレンタカーのトランクのそばでしゃがみこんだら、いい匂いの白いおててが見えた。


「慶ちゃん！早くきて！慶ちゃん！大丈夫？Aちゃん」
ああ伊織さんの声だ、と思ったら、誰かがタタって走ってきた音がして、体が浮いてびっくりする。



……私は今、小山さんにお姫様だっこされている……！




「大丈夫？Aちゃん」
「お顔が真っ青だよ、お部屋で休もうね」


小山さんと伊織さんが代わる代わる言ってくれるけど、びっくりして声が出ない。


両手を頰と口に当てて、大好きな小山さんにだっこされながら、旅館に入る時、ふらふらするエマちゃんを支えてるシゲがこっちを見るのが見えた。

13→←11

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す