〃 ページ9
me side
目が覚めるとそこは、暗く冷たい牢獄だった。
記憶を辿り、自分が拐われたのだと理解する。
鉄格子の外側に火が灯ったろうそくが一本。
その微かな灯りに照らされ、自分の様子を探る。
腕は後ろ手に拘束され、外そうと身をよじれば無機質な鎖の音が響きわたる。
音が反響する感じから、地下であることの察しはついた。
ナイフを掠めた腕を見れば、応急手当てはなされているようだ。
鉄の鎖はほどけそうもない。
周囲を見渡しても、ただ鉄格子に囲まれていることしかわからなかった。
しばらくして、足音と共に人影が現れた。
ゆっくりと顔を上げ、人物を確認する。
ここに来る前に出会った男達とは違う、細身の男性がそこにいた。
「やぁ。お目覚めかい。」
『…ここはどこ。何が目的だ。』
「見てわからない？牢屋だよ。君、我々国の幹部なんだろう？
ここまで言えば、大体は予想つくはずだ。」
『あなた……この前の…？』
男の口元が狐を描く。
ｶﾞｼｬﾝ、と牢屋の鍵を開け、男が入ってきた。
ぐっ、と身構える。
「そうだ。僕は君達との戦争で負けた国の次期国王。
地位を取り戻しに来たんだ。」
『国王に子供や兄弟はいなかったはずだが…？』
「僕は国王の側近の一人さ。君達が邪魔しなければ僕は…！！」
『っ、』
胸ぐらを捕まれる。
間近で見た男の瞳は背筋が凍るほど暗い闇で埋め尽くされていた。
「僕は負けを承知でここにいる。君を殺して、バラバラにして君の仲間達に送りつけてやるんだ。」
『なっ……』
冷たい刃が体に触れる。
ナイフで私の体を触る男の顔は狂気に満ちている。
「まずは足から切っていこうか……それとも腕か……
あぁ、想像しただけでも心が震える…！！
自分の元へ送られてきた君の体を見てどんな顔するかなぁ…！！」
『…ｯその前にあなたが死ぬよ。』
気持ち悪い。怖い。
それを隠すように見栄を張る。
「じゃあ早くしないとな。」
真顔でそう言ったかと思えば手を離され、私は思わず地面に膝をつく。
「やっぱり、最初は右足からにしよう。」
『ﾋｯ……』
ナイフの鋭い部分が右足の膝上に当てられる。
ゆっくりと押し当てられ、チクリとした感覚と同時に浅い傷から血が一滴滲み出す。
全てを覚悟したその時、大きな破壊音が聞こえた。
syp「A！！」
その声を、姿を目にしたとたん、安心感に包まれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1131人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イデア(プロフ) - かめ~kame~さん» かめさんありがとうございます(嬉涙)コメントくれて嬉しいですー！！フォローしてくれるんですか！仲良くしてください(土下座) (2020年8月12日 23時) (
レス) id: 8186d383a3 (このIDを非表示/違反報告)
かめ~kame~(プロフ) - よみました!!!!すごいいいお話でずっとにやにやしたりしてました(笑)Twitterフォロー失礼します!!!! (2020年8月12日 23時) (レス) id: 45d186dbbb (このIDを非表示/違反報告)
イデア(プロフ) - 星が赤くなってる……！！？ありがとうございますー！！！！！(嬉涙) (2020年3月10日 0時) (レス) id: 5fcff99675 (このIDを非表示/違反報告)
イデア(プロフ) - チーズケーキさん» どうも！ご無沙汰してました！！こちらこそリクエストありがたかったです…！！今後も何卒！！ (2020年3月9日 16時) (レス) id: 5fcff99675 (このIDを非表示/違反報告)
チーズケーキ(プロフ) - 完結おめでとうございます！リクエストも感謝しかありません！！ショッピ君かあいい(幼児)素敵なお話をありがとう！！ (2020年3月9日 15時) (レス) id: b91e5f674c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：イデア | 作成日時：2019年8月29日 15時
