【ハイキュー】それでも、この世界で ―3―

Midnight×instant×dinner ページ25

「…ヴァッ？」

自分のそんな間抜けな声と、鼻をくすぐる美味しそうな匂いで目が覚めた。

続いてペリペリという小さくもワクワクさせてくれる音、視界の隅に漂い出す白い湯気。
その湯気に乗って、美味しそうな匂いが一段と強くなる。

「………ラーメン！！」

「凄い勢いで飛び起きたね…」

間違いない。私が大好きインスタントラーメンの匂い。
きっとあの体力作りトレーニングの後、及川さんに運ばれている中意識を飛ばして寝た私の為に誰かが用意してくれたに違いない。

そう確信して私は飛び起きたのだが。

「ごめんねザンカちゃん、俺もお腹空いてたから起こして一緒に晩御飯をとは思ってたんだけど俺のが先に出来上がっちゃった」

「ガァッデム！」

「寝起きでもそんなに叫べるって喉どうなってるのザンカちゃん」

及川さんのそんな言葉と無駄に綺麗な笑顔にちょっとばかり回復した体力を無駄遣いして叫び散らしてしまった。

恐らく及川さんは自分のぶんを先に作ってそれから私のぶんのラーメンを作り、湯を入れて待っている間に私を起こそうとしていたのだろう。
いや有難いんだけど、有難いんだけども。

「まあすぐ出来るしちょっと待っててよ。
あ、水分補給とか今のうちにしとこう？あのあと水も飲まずにザンカちゃん寝たでしょ？」

「ぶ〜…分かりましたぁ…」

美味しそうなラーメンの匂いを嗅ぎながら数分待たされるってなかなかに地獄なのだが。私にとっちゃ極刑なんだが。

とはいえ流石に寝起きで叫ぶなんて事をしてしまうとザンカちゃんと言えども喉がヤバい。
目の前で美味そうにラーメンを食われるのはなんか癪だが大人しく水分補給をしておこうと思う。

「…因みに及川さん」

「ん？なぁに？」

「今日もまた私とお喋りとやらをするおつもりで…？」

「大正解☆」

「ガッデム…」

「ねえ、それ英語で誤魔化してるけど日本語に訳すと『クソが』って言ってるよね？」

チャーシューをもぐもぐしながら話す及川さん。
その表情は何かぼうっとした月明かりに照らされて妖しく見える。

ただ今の話の内容に関しては…うん、ノーコメントで。

「でも俺昨日決めたし？毎日数分でもザンカちゃんとお喋りするって宣言しましたし？」

「ザンカちゃんは乗り気じゃないんだけどにゃぁ…」

「なんでさ！
…あ、やっぱ俺みたいなイケメンと話すのって緊張しちゃう？」

「すみません3分経ったんでラーメンいただきますね」

「及川さんよりラーメンを優先するなんて…！」

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