【ハイキュー】それでも、この世界で ―3―

湯気、一人、ゆらゆら ページ15

本当に私達はこの場所を離れるべきなんだろうか。
もしかすると、これからもコンテナで食糧が今朝のように届けられるかもしれない。
もしまた届けられる事があれば、食糧の心配はとりあえず無くなる。

だが、拠点を変えるとどうなる？
もし偉い人達が私達がここから消えたと気付かなかったら？
消えたと気付いたとしても、何処に消えたのかまで探ってくれるか？
ゾンビ化して死んだ、とあっさり決められるのではないのか？

温かい朝食にありつく事が出来て有難いと思ってはいるのだが、なんとなく私は納得していなかった。
どうにも疑問だとか引っ掛かるものも多いのだ。

失礼ながら、偉い人達に“邪魔すんな”なんて思ってしまった。

見捨てられたなら見捨てられたで自由奔放に勝手気ままにやらせてもらうつもりでいたのだが、半端な形でちょっかいを出されたせいで少しばかり悩む事になったんだ、これくらいは愚痴らせて貰おう。
助ける気がろくにないのであれば半端に首を突っ込むなよ。

少し冷めてきたラーメンのスープをゴキュゴキュ飲みながら、眉間を顰めた。
折角の美味しいラーメンがなんとなく薄く感じてまた何か偉い人達にムカつく。

「………んぬぅ…」

「……………ザンカちゃんどうしたんだろ…？」

「ラーメン食いながら悩む事って出来るんだな…俺には出来ん技だ…」

「確かに岩ちゃん食べてる時何も考えてなさそうだもんね？」

私の悩む様子に気付いたらしく、何やらまた騒ぎ始めている及川さん達が視界の隅っこでチラチラと見える。

普段の私ならツッコミを入れるなり悪ノリするなりするところだが、残念ながら今回は考えるのに夢中で彼らが何がどうなって暴れだしたのか理由が分からない。仕方ないからスルーさせて貰おう。後々ふざけられる時にふざけて倒してやる。

敢えてこれから拠点を変えるという動きを見せるのはなんだか嫌だ。
少なくとも私は人に媚びを売るような人間ではない。

だがそんな感情に身を任せて食糧が得られないというのも痛い。
この人数で生活をしているんだ、いつ何が起きるか分からない。

だが上記のように偉い人達相手に尻尾を振って食糧を求めるのも………

もう無限ループである。
同じことをぐるぐる考えてもナンセンスだと分かってはいるが、最善はどれだと悩むとどうしても凝り固まった思考を回転させてしまう。

こうして私は、折角の美味しいラーメンを思う存分堪能する事なく完食してしまったのだった。

ザンカ:Liquefaction MODE→←温もりと疑問

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