芽生えてきた嫌なアレ ページ10
「………いや、ちょっと待て。」
薬品を漁る為会話を途切れさせて数分、いや数十秒くらいだろうか。
突然薬品を漁る私の背後から何かに気付いた岩泉さんに声を掛けられた。
何か外にヤバいモノでもいるのを見つけたんだろうか、なんて考えて振り返ってみると。
「…エアガンにコスプレ………
お前そこまで用意してた、って事はここがこの状況に陥ると分かってて準備してたのか？」
紛れもなく人間の私に向けられた疑問や恐怖、不安、ネガティブな感情がぐちゃぐちゃになって込められた視線。
岩泉さんはそんな視線をまるでナイフを突き付けるかの様に私に向けた。
「この状況、つまりパンデミックが起こると分かってた上でこんな事をやってると？」
「ああ。こんな事を言うのは気が引けるが、お前からはこの状況になる事が分かっていて武器を用意、余裕さえ感じるぐらい冷静なオーラが見える。
だから必然的に怪しく見えるんだよ、この事態を引き起こした犯人なんじゃねぇかって。」
まあド正論ですよね。
それ私もさっきまで考えてましたよ、ある意味私ゾンビより怖いよな、って。
口には出さないが、頭の中で少し開き直ってみる。
長年続いたクラスメイトからのいじめで慣れていたつもりではいたが、やはりこういう目で見られるのは嫌というか気分が悪いのは変わりはない。
私だってパンデミックが起こる、なんて考えない能天気な学生をやってる時にこんな事態になって今の私の様な人物が現れたらまず真っ先に疑うだろう。
それくらいの事、私にも分かる。
だからこそ、私は少し真面目な顔をして彼らにこう返事してみた。
「そうですね、そう言われてもおかしくないと覚悟はしてました。
けど…先輩方は『2年に気持ち悪くて頭おかしいオタクがいる』って噂、聞いた事ありません？
あれ私の事なんですよ。」
一定のペースで、ただ淡々と弁解する。
これで説得失敗したら武器とか取り上げられて此処から追い出されるんだろうな、なんていう邪念を彼らに感じさせない様に。
「私も自分が頭おかしい事は自覚してるんですよ。イカれてる、って言葉を言われるのが何より嬉しかったりしますし。
だからこそ、私はこんなもん持ち歩いてたんです。」
「…だからこそ？」
相変わらず薬品の瓶をカチャカチャ音を立てながら、声に抑揚を付けずに。
「私正直こんなゲームみたいな状況に世界が陥らないか、って期待してたんです。
それこそ『イカれてる』って言われるかもですけど。」
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作者名：Guilty | 作成日時：2019年5月28日 2時
