選んだ希望、その対価 ページ45
「…それは………
やっと落ち着けたのにもうここから出てく…って事か?」
「まあ単刀直入に言っちゃうとそうなりますかね。
及川さん岩泉さんには校内制圧に協力して貰ったんで努力が無駄に…とか思われちゃっても仕方ないんですが。」
それでも試す価値がある、と私は絶望に似た感情を顔に滲み出させる岩泉さんに力強く言葉を掛けた。
果たしてこの言葉が彼の為になるか、と言われると正直私にも分からないのだが。
この人実は誰よりも気を張っていたんだろうな。
自分も死にたくない、周りにいる誰も死なせたくない。
そんな感情が強いからこそ、こんな表情をさせてしまったのだろう。
でも、私は生きる為にやりたい。
こんな世界でハッピーエンドを迎える為にも、この可能性に賭けてみたい。
例えその対価が、重たいものだったとしても。
「…ねえザンカちゃん、さっき宛ならあるってボソッと言ってたけど…その宛っていうのは?
ここよりも条件がいい場所、あるの?」
「ま、もしその条件がいいなら俺らは賛成するぜ?
ロッカーの件はさておき、お前のサバイバル能力に生かして貰ったんだしな。」
及川さん、花巻さんはどうやら私のその意見を前向きに考えてくれているらしい。松川さんもコクリと深く頷いてくれた。
一番余裕無さそうなのでは、と心配していた及川さんが案外冷静で助かった。
…勿論口に出すと面倒な事になりそうなんでそんな言葉は飲み込んだが。
「…なら、これからこうしたいって全員を頷かせる為に説得しますんで。
まず私のスマホ見て貰ってもいいですかね?」
私はいつもの冗談を封じて、スマホを操作しながら口を開いた。
画面には、もしもパンデミックが起きた時用にと今朝スクショしたばかりの地図。
まさか日々の習慣が本当に活かされる日が来てしまうとは、なんて思いながら私はその地図を指差した。
「この学校がある場所って比較的街中ですよね。なんで当然人も多い。
どうやら一番最初に感染者が出たのはこのエリアみたいですし、逃げ惑う人もかなりの数いたでしょうね。」
トントン、と指で拡大したエリアには普段人が溢れ賑わう通り。
ここにゾンビ、又はウイルスなんて放り込まれたらそりゃパンデミックも起こるだろう。
「で、この中に突っ込んでいくってなかなかにハードですよね。
でもだからこそ、奪う価値はあるかと思うんですよ。
無論、私一人では出来ませんけど。」
ここに関してはもう、私以外のメンバーに選択を委ねるしかない訳だ。
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作者名:Guilty | 作成日時:2019年5月28日 2時