【ハイキュー】それでも、この世界で ―1― (ページ3)

今日:71 hit、昨日:201 hit、合計:98,591 hit

終焉の始まりページ3

「………なん…だよ、アレ…」

なんとか私が発せた言葉がそれだった。
辿々しくて、弱々しくて周りの喧騒に消え入りそうな声。
そんな声で私はそれだけ呟いていた。

目の前に広がる光景は現実とは思えない程突飛なものだった。

「ヴゴォ…」だとか、「ヴヴゥゥゥ…」とかいう濁点が文字の全てに付いてんなこんな唸り声上げるやついるんだとか思ってしまった私はいよいよヤバい、のだろうか。

…とりあえずありのままに、分かりやすく今の状況を説明しよう。

私はただいつも通りに朝食を食らい、いつも通りに家から学校に向かい、
いつも通りに朝の挨拶を華麗にスルーされ、いつも通りに授業を受け退屈していたところだった。

すると突然、だ。
なんの合図も無しに、教室の窓の外に広がる街の風景から悲鳴や怒号が溢れ出した。

何かに抵抗する声、自分一人だけ逃げようとしているのか誰かに退けと叫ぶ声、最早何を言っているのか分からない程泣きじゃくる声。

そんな声に、私だけではなく授業を真面目に受けていたクラスメイト、普段は事ある毎にやたら騒ぎ立てるクラスメイト、
更には先程まで気怠そうな表情をしていた教師までもが何事かと真剣な表情で窓の外に注目した。

無論、窓際に席がある私もシャーペンを置いて外を見ていた。
聞こえてきた声に誘われ、そこに何がいるのかと好奇心を擽られて。

目玉をぐりぐり動かして、そこで何が起きているのか確認しようとする。

…と、その時だった。

助けて、と断末魔に近い金切り声が聞こえた。
そしてそれはすぐゾクッとする様な生々しく気味が悪い唸り声へと少しづつ変わっていく。

そして、

「ヴ…ヴァギャガァァァ…！」

そんな声と共に姿を現したのは、ゲームや映画でよく見る所謂ゾンビだった。
絶対に現実世界にいるはずのない、血に飢えたゾンビ。

その姿を目にしたクラスメイト達は、途端にザワザワと騒ぎ立て始めた。
なんだあれ、なんかのイベント？フラッシュモブ？と各々が笑い合いながら、スマホのカメラを向けながら。

だが私はその姿を拝んで笑えなくなっていた。
見紛うはずがない、アレは間違いなくゾンビだ。
好きなゲームで幾度となく倒してきたゾンビだ。

「………これ…パンデミック…？
今外にいるのは…それに感染した、ゾンビ…？」

ゲームでよく見る設定を口にして気持ちを整理してみるが、どうも現実として受け入れられない。

だがこのままだとまずい。
私はゲームの主人公の様にそんな感情を抱いた。