支配するゾクゾク ページ17
ゾクリ。
まさにそんな擬音が今この状況を表すのにピッタリだろう。
先程まで仲良く夫婦喧嘩をする様に互いをポカポカ殴り合っていた及川さん、岩泉さんは不安や恐怖、絶望を織り交ぜた嫌なゾクゾク感に満ちた表情で私を見つめた。
「………そうだ…松川…花巻…国見も金田一も…皆俺ら同様無事にいるかどうかは…」
「……………何度も言いますが、私オタクなんでゲーム内でこういう絶望を味わって、キャラクター達の親友や恋人、仲間が墜ちていく様を何度も見てきたんですよ。
最初は毎度毎度ボロ泣きしてました、なんでこんなに無慈悲なんだって。」
残酷ではあるが、二人を落ち着かせる為にも私は冷たく淡々と言葉を紡いだ。
もし、万が一彼らの友人達が変わり果てた姿になっていたとしても、出来る限り絶望しない様に。
「でも人間って変なとこまでよく出来てるもんなんですよ。
何度も何度も繰り返しそんなシーンを見て、ちょっと慣れてきたんです。悲しいとは思っても泣かなくなったんです。」
せめて、せめてもしそんな状況に陥ってしまった時の為に。
もしも彼らの友人達を自らの手で葬らなきゃならない、なんて事になった時の為に。
「だから…もし私と手を組むのなら。最低限それぐらいの覚悟はしてください。例え今校内を制圧する為に私に着いてくるとしても、ここで待つにしても。
ゾンビなんて生き物に成り果てて望みもしないのに人間達を食らってしまう。せめてそんな事を大事な人にさせない為に、自分の手を首に掛ける事を覚悟してください。
その人達の旅立ちを、せめて安らかに出来る様に覚悟してください。」
それが私と組む条件です、と彼らにキツく言い放つ。
ただでさえ絶望的なこの状況でこんな厳しいなんて表現が比じゃない程の厳しい言葉を突きつけるなんて、と言う人だっているかもしれない。
でも今のこの状況ではこの言葉は必要だ、と私は考えた。
今これだけ厳しく当たってしまえば、もし組むにしても組まないにしてもある程度感覚が麻痺してしまい、ある程度戦える様になるのだ。
あえて絶望を強く感じる事で拳に入る力。彼らのそれを信じてみた。
やっぱり、私が憧れていたゲームのキャラクター達が紡いでいた言葉を少しばかり真似てみたのはいいものの、それを今ここで言うのはかなり覚悟がいる。
でも今私の前で頭を抱えている彼らはもっと厳しい絶望に浸っているだろう。
二人の顔を見下ろしながら、私は二人からどんな答えが返されるのか待った。
正しい答えはここにない→←Crash,Crash,Crash
80人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Guilty | 作成日時:2019年5月28日 2時