【ハイキュー】それでも、この世界で ―1― (ページ12)

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オタク女子高生によるレクイエムをページ12

ベートーヴェンの第九を某アニメの銀髪赤目美少年っぽく鼻歌で歌いながらバリケードを作っていく。

何敵前で余裕ぶっこいてんだ、と言われてしまいそうだがこうでもしないと緊張を紛らわせないのだよ。
アレだ、ルーティーンとかいうヤツだ。なんか詳しくは知らないが。

「と、とりあえずこれでもう大丈夫なはずだよ！
この扉はそう簡単には開かない！」

「一応こっちの窓も棚動かして塞いどいたからな！」

その間にあっという間にバリケードは完成。
岩泉さんに関しては窓まで塞いでくれた、有難い。

と、ここまで出来るとあとは戦いに備えるのみ。

「ヴァアアアウゥ…！」

ドガッ、と扉に体当たりでもしたのか鈍い音。
そしてゾンビの相変わらず気持ち悪い唸り声。
更に扉を開けたいのかベタベタと手で触っている様な音が静かだった教室に響いた。

更に更に、

「ヒィッ…！？」

口を押さえながらもそこそこデカい声で悲鳴を上げる及川さん。
なんか可愛いなこの人。図体デカいのにしゃがみこんで口押さえててハムスターみたいだ。

だがその声でゾンビが余計に反応してしまう。

「グゥエエウウウゥッ」

「ヒィィィッ！」

なんだこの悪循環。
この光景のほほんとしてんのに結構怖い状況に陥ってんぞなんだこれ。

「うるせぇなゾンビに反応されるだろ黙ってろ…！」

「そ、そうは言っても…っ！」

岩泉さんが及川さんを宥めるも、それでも怖い事には変わりはないんだろう。
遠目に見ても肩が少し震えているのが分かる。

「…残華………
これからどうすんだ…？やっぱ戦うつってもこの場所じゃそう思うようには………」

及川さんの隣にいる岩泉さんだって、声がさっきより弱々しくなっている。

…いや、そりゃ当たり前だとは思う。
今まで巻き込まれるなんて思ってもみなかった状況にいきなり日常生活から引き摺り出されて、
どう戦えばいいのか分からない、なんなら戦うだけでもリスクが十二分に高い敵に集団で襲われて。

私だって素直に言うととんでもなく怖い。
今足元を見せられないぐらい膝が震えて仕方がないし、エアガンを握る手は既に汗でビチャビチャだ。

この二人の前に隠れる為の大きめの机があって良かった、多分これ見えてねぇわ。
まさか机に助けられる日が来ようとは。

掌から滴る汗を拭いながら、冷静なフリをしながらなんでもない事を頭の中で言葉にしてみる。
これだけでも落ち着きを取り戻せるのが私、残華 Aという生き物なのだ。