【ハイキュー】それでも、この世界で ―1― (ページ11)

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イカれたオタク×常人＝？ページ11

なんでそんな事を望んでるんだ。

そう言いたげに薬品の棚のガラスに及川さん、岩泉さんの顔が反射する。
そりゃそうだわな、私だって私なりに平和に生きてられればこんな事望まなかった。

「…だから、持ち歩いてたんです。
厨ニ病の延長で、この衣装も、このエアガンも。いつか私が無双出来る世界にならないかな〜、ぐらいの軽い気持ちで妄想してニヤけながら。
あ、背中に背負ってるさすまたはさっき校内の倉庫からかっぱらって来ましたけど。」

あとはオタク故にいじめられる事も多かったんで護身用も兼ねて、と付け足すと岩泉さんはふっと息を吐き出した。

「分かった、もういい。疑って悪い。
そもそもここの生徒ならこの時間授業受けてるもんな。ここの近くとはいえ街中でパンデミックなんて起こすの無理があるか。」

…どうやら、追い出されはしないらしい。良かった。
心の底から良かった。
武器とか取り上げられて外に放り出されたら流石に生きていく自信は無かったからとりあえず良かった。

先程まで『なんだコイツ』と言われてしまいそうな目で見られていたはずが、素直に話しただけでこうもあっさりとその視線は解除された。

「じゃ、じゃあ私の事追い出したりはしないですよね…薬品また漁らせて貰って…」

が、一難去ってまた一難。
ふと私達の耳に微かな声が届いた。

「………ね、ねぇ、あの声…」

「……………もうこの辺りまで押し寄せて来てんのかよ…」

これでなんとか信用して貰った上で薬品を漁れるぜうぇいうぇい、とか思ってたのにこの部屋の向かい…つまり階段付近から唸り声が聞こえる。

言わずとも分かるだろう。
ヤツらだ…ゾンビが増殖してすぐそこまで来ているのだ。

ゾクリ、と背中に妙な感覚が走る。
恐らくこれは多少なりとも感じている恐怖、不安が肥大したモノと私の中で蠢き出した興奮が正体だろう。

オタク特有のチキン要素とシューティングゲームサバイバルゲームにetc…で鍛えられた戦闘狂のDNAが疼いて疼いて仕方がない。

「とりあえず鍵は閉めましたしなんか動かせて衝撃とかに耐えられそうな丈夫な物ドアの前に集めてバリケード作りましょう、出来ればちょこっと隙間作ってくれれば私そっからエアガンの銃口差し込んで撃ちますんで…！」

少しばかり怯え始めた二人を励ます為にも私自ら机を引き摺って扉の前へ持って行く。
そんな私を見て、及川さんも岩泉さんも互いの顔を見て頷き、協力する姿勢を見せてくれた。