【ハイキュー】それでも、この世界で ―1― (ページ1)

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キッカケページ1

いつも通り、まだ眠いと駄々をこねる体を叩き起こして。
いつも通り、トーストを喉の奥へと放り込み。
いつも通り、閑散とした通学路を辿って。
いつも通り、挨拶をしても聞こえないフリをかまされて。
いつも通り、怠くて仕方がないといった様子の教師の話に私も気怠く耳を傾けて。

______ここまでは、全ていつも通りのはずだったのだ。
そう、まさに昨日どころか一昨日と全く同じ日常を私は続けていた。

私だけじゃない。
私と同じく怠そうに授業を受けている彼ら、彼女らも同じ様に日常を過ごしていたはずなのだ。

突如教室の外から聞こえてきたのは断末魔だった。

『助けて』、『嫌だ』、そんな言葉が金切り声になって私やクラスメイトの耳を劈く。
もう言葉ではない声が辺りに充満しては共鳴する様にその規模を広げていく。

そして、

「………なん…だよ、アレ…」

少しづつ、本当に少しづつ。
悲鳴、怒号、断末魔は得体のしれない何かへと変貌していったのだ。

人の姿を保ったまま、人ではないナニかへと。
少しづつ、でも確実に。

授業どころではなくなった教室からクラスメイト達は野次馬になりなんだなんだと窓際、或いは教室の外へ飛び出していく。

慌てふためきながらそんなクラスメイト達を纏めようとする教師も、纏めようとしながらも窓際へと近寄っていく。

そうしている内に、その得体のしれないそれは私と生徒達が大勢いる学校のグラウンドへと侵入を始め、そこに興味本位で出ていってしまった人間達を蝕み始める。

そこでやっと、クラスメイト達は慌て始めた。

次々と教室を飛び出し、押すな退け邪魔だと喚きながら我先にと何処かへ向かう。
彼らにはもう、教師の指示に従う為の理性なんて無くしていた。

____ただ一人、ぼんやりとその光景を眺める私を除いては。

「………これ…パンデミック…？
今外にいるのは…それに感染した、ゾンビ…？」

冷静に、ボソリと自らの頭の中を整理する為にそう呟いてみる。

オタクでゲーマーな私の視界に広がっているこの世界は、どうにも見慣れたものだった。

まるで、昨夜までプレイしていたゾンビゲームを現実世界にそのまま反映したような…そんな風景。
聞こえてくる悲鳴、断末魔だってなんとなく聞き覚えがある。

私一人だけが残された教室で、私は無駄に大きく聞こえる自らの鼓動に耳を澄ませながら目前で始まった世界を見下ろしていた。