旧・黒髪とサファイア III (ページ4)

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ミセス・ノリスの事件から数日経ったが、学校では事件の噂が回り続けていた。
フィルチは現場の周りをウロウロと徘徊し、そのせいで皆、あの夜のことを未だハッキリ覚えていた。噂の一つにこんなものがあった。

「…フィルチはスクイブだったの？」

図書室に行く道すがら、レイが唐突に尋ねてきた。

「そうだよ。クイックスペル・コースで魔法の勉強をしようとしてたんだから、間違いない。そこから来た手紙をフィルチが持ってた。」

「そっか。」

レイは表情を変えずに考え込んだ。

「…それで、何の本を探しに行くの？」

あたしの問いかけに、彼女は短く答えた。

「＂ホグワーツの歴史＂」

どうやら彼女は、秘密の部屋について調べ物をしているようだった。

「一つ、確かめたい事があるんだ。」

ホグワーツの歴史が置いてある本棚に近づくと、ジニーとレティシアがいた。

「おはよう、ジニー、レティー。」

あたしとレイが声をかけると、レティーが振り向いた。眉が下がっている。時間差でジニーが振り向いて、あたし達に目もくれずに走り去った。

「どうしたの？」

と、レイ。

「キャシーとジニーが喧嘩しちゃった…。私、どうしたらいいかわかんないよ。」

妹の空色の目が潤んだ。

「大丈夫だって。3人はルームメイトなんでしょ？また明日話しかけてみなよ。」

あたしはつい、彼女の頭を撫でてしまった。(レティーは無性に撫でたくなる。)

「うん！」

目を擦ったレティーは、可愛い笑顔を見せた。

「可愛いねー。」

彼女の後ろ姿を見ながら、レイがにこやかに言った。

「そうでしょ。自慢の妹。」

あたしも自然と笑顔になる。それから二人して同時に声を上げた。

「…あ、そうだ、ホグワーツの歴史がいるんだった！」

あたし達は本棚の四段目、五段目、六段目を見た。…空っぽだった。

「うそっ？前まではギュウギュウに本が詰まってたのに！」

レイが目を丸めた。

「急に皆して…私も人のこと言えないけど。」

「一個も残ってないね。」

レイはあたしの言葉に頷いて、肩を落とした。困った表情をしている。

「一つだけでいいのになぁ…どうしよう。とりあえず、もう帰ろう。」

「うん。まぁ、ちょっとしたら返却されてるよ。」

そう言いながら、あたし達は寒い廊下を寮まで急いだ。
ホグワーツの歴史…うーん、誰か兄弟に持ってた人いた気がするけど…。