Bitter.30 ページ33
,
朝になり、家のインター音が鳴って目を覚ます。
隣にいるころんはまだ寝ているので、起こさないようにそっとベッドから出てモニターを見た。
深紫の髪色をした優しそうな男の人。
誰なのかは分からないけれど、ころんの知り合いだろうと軽い気持ちで玄関のドアを開けた。
目を見開いて驚くその人は、忽ち顔を青白くさせた。
私の顔も一瞬で凍りつく。
彼は……私のよく知っているグループのリーダーだったのだ。
「Aさん?だよね。どうして此処に居るの?」
口角は上がっていて、一見優しそうな笑顔を浮かべている様に見えるものの、目は笑っておらず彼のブラックな部分がよく分かる。
さとみと付き合っている事を、るぅとくんところん以外に知っているメンバーは ななもり。さんだけだ。
何度かお会いした事もあるので、『人違いです』とも言えない。
『私は……ころんの動画編集の為に呼ばれて…』
咄嗟にありもしない嘘をつくが、そんなの彼にはお見通し。
更に冷たい視線をぶつけられる。
「君は、さとみくんの彼女だよね?」
その言葉が、私の中の背徳感というものを抉り取ってきた。
焦りが生じられ、頭が痛くなって視界もモヤモヤとした黒い何かに包まれる。
嫌だ。誰か助けて。
そう思った矢先に、ころんがいつの間にか隣に立っていた。
救われた気がしたんだ、この時までは。
「なーくん。あのね、僕 此奴と浮気してんの」
素直にそう認める彼を、私は信じられないという風に見つめる。
何故バラしたんだ、全てが崩れてしまったではないか。
「ふーん。まあ、気づいてたけど……Aさん、もうそういうの止めてくれる?」
さっきまでの笑顔が消え、誰もが怖がる様な真っ黒な顔を見て身体に鳥肌が立つ。
なんで。なんで。なんで。
いいじゃん、ほっといてよ。
「俺はすとぷりのリーダーだから。メンバーを守る義務がある。みんな大切な仲間なの。こんな事知ったらメンバーだけじゃなく、リスナーさんまで悲しむ。そんなの許さない。絶対、幸せにするって決めたから」
熱い紫色の瞳を見て、今 初めて事の重大さを知る。
いけない事なんだ。許されない事なんだ。
「止めてくれないのなら、強制的にでも突き放すけど?」
きっと、彼が止めてくれないと私はもっと先を求めてしまう。
駄目って分かってはいても、気付かないふりをするんだ。
それなら……
『お願いします……』
早く、私を解放して__。
180人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「すとぷり」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きら(プロフ) - めみさん» 了解です!ありがとうございます! (2020年6月10日 21時) (レス) id: b3386af755 (このIDを非表示/違反報告)
めみ - きらさん» パスは莉犬くんの誕生日です。 (2020年6月10日 17時) (レス) id: c6bcbfea4c (このIDを非表示/違反報告)
めみ - きらさん» エンドまでご覧になられましたか?続編は全然満足出来ていないので、期待はしないでくださいね。いつも読んでいただき、ありがとうございます。これからも突っ走っていきます! (2020年6月10日 17時) (レス) id: c6bcbfea4c (このIDを非表示/違反報告)
きら(プロフ) - いつも楽しみに読ませていただいてました!なので続編がパスがかかったところから読めなくて少し寂しいです。教えていただいたたら幸いです。 (2020年6月9日 6時) (レス) id: b3386af755 (このIDを非表示/違反報告)
たぴたぴ次郎 - めみさん» この作品も神すぎる…!なんかこう言うちょっとドロドロな感じ好き!更新ガンバ! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 63edd506f6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:めみ | 作成日時:2020年5月12日 1時