(仮) forth (ページ27)

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午前中なるべく顔を上げることなくパソコンに向かい続けた。それでも引っ切りなしに先輩の元に「久しぶり！」と色んな人達が会いに来るから、その度に先輩の少しハスキーな声と豪快な笑い声が耳に届く。

どーしよう…集中できない……

作業効率は通常の半分くらい。予定より大幅に遅れている。昨日の分も取り返さないといけないのに…

どうすれば先輩の声を気にしないですむか考えて、思い付いたのが上戸さんの独り言に集中するってこと。

一生懸命上戸さんの呟きを聞き取ろうと耳の神経を研ぎ澄ますけど、今日に限って上戸さんが何も呟かない。なんで…？

打つ手なく、ただ先輩の声に耐えるしかない状況で、「気にするな。仕事に没頭しろ」って思えば思うほど、どつぼに嵌まっていく。焦った私は二宮さんに助けを求めるしかなくて……

「二宮さん」

「んー？」

「何か喋っててください」

「は？何を？」

「何でもいいです。出来るだけ二宮さんの声しか聞こえなくなるくらいのボリュームで」

「ワタシ一人で大声大会やんの？(笑)」

「大声は皆さんの邪魔になるので、程々で…」

「あなたね、注文が独特なのよ。変顔とか程々の大声大会とか…」

「…ですよね。すみません。忘れてください」

「や、別に謝るほどじゃないけど…。普通に会話するってので良くない？」

「…何話します？」

「あなたが決めてよ」

「……落語できますか？」

「…結局俺一人で喋んのかよ」