(仮) forth (ページ32)

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クフフって笑う二宮さんがタンブラーに手を伸ばして、「あ…」と呟く。さっき飲み干していたから中身は空。

じーーっと投げかけられる視線が横顔に刺さる。

「………」

やっと仕事を始めたのに中断したくなかった私は無視を決め込むけど、二宮さんの視線が気になって仕方ない。はぁ…ってため息を溢して手を止めた。

「もぅ…」って心の中で愚痴りながら隣を見れば「コーヒーがないよ」って訴えてくる色素の薄い瞳。

無言で立ち上がると黄色いタンブラーを手に取った。

「大野さんも淹れましょうか？」

1杯も2杯も作る手間は同じ。ついでに大野さんの分もと思って声を掛けた。

「んー、飲みたい…けど、俺そろそろ出る時間だ」

チラッと時計を確認して、もうそんな時間なんだと驚いた。お昼休みまでに終わらせるはずだった仕事の半分も進んでいない。最悪だ……

「ねぇ、それって俺もお願いしてもいいの？」

「え？」

反射的に声のする方に向けてしまった視線。その先にはキラキラしたまぁるい目があって…

「答えなきゃ」って口を開けるけど、グッと首元を押さえつけられた様に声が出てこない。

「ヤバい…変に思われる」って焦るほど声の通り道が塞がっていく。