検索窓
今日:8 hit、昨日:44 hit、合計:58,461 hit

011:零れた雫は涙 ページ12







家に帰ってきた私は、部屋の片隅にうずくまっていた。


『釣りおうてないよなぁ』


ぐるぐる

頭の中をずっと、その言葉が旋回している。

名前も知らない、顔も知らない人から言われたことなんて気にしなくていい。

そう思うのに、どうしても頭から離れてはくれない。

きつい。




「はるみちゃーん!おかんが回覧板のこと教えたいらしいから行ってやってー!」




お母さんを呼ぶ、大きい大きい治くんの声。



なんで、今なんだろう。

お兄ちゃんたちはうちに来ると、絶対私の部屋によって行くから。


タイミング悪すぎるよ、来ないで。



なんて思ってしまった私は最低だ。





階段をリズミカルに上ってくる音。

こんこんと、律義に鳴らされたノック音。


「Aちゃん入るで〜」


いつも通りのんびりとした治くんの声。

やだよ、なんて思っても、開かれるドア。





「Aちゃんどうしたん?」



数拍おいて、治くんが口を開いたのがわかる。

誰かにこんなみじめったらしい姿を見せるのは、いやだったのに。




「なんにもないよ」


顔を上げずにそういう。

本当は、人の目を見らずに話すのは嫌い。



「なんもない子はそんなふうにうずくまらんよ」




彼が私をじっと見ているのがわかる。

いや、いやだ。

だれだって、見られたくない自分の姿なんていっぱいあるでしょ?

だからお願い、かえって。

祈るように懇願しても、彼が動く気配はない。





「なあAちゃん言うてみ。ちょっと楽になるかもしれへんよ」


「…ならないよ」




心配してくれている彼にも、そんな口しかきけない自分がいやだ。

だんまりを決め込む私から、治くんは聞くのはやめたようだ。


ありがたい。



彼にばれないように、体操座りの間、涙が零れた

012:傷ついたら優しくなれる→←010:好かれるって難しい



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (115 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
163人がお気に入り
設定タグ:北信介 , 稲荷崎 , ハイキュー
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

パルム(プロフ) - らさん» コメントありがとうございます!確かにそうだな、と考えなおしました。北さんに二度目の好きを洩らした後のヒロインと北さんの展開はご想像していただけると幸いです。これからもっとその人物に寄りそう素敵な小説が書けるように努めさせていただきます。 (2021年8月9日 19時) (レス) id: 7103dc21f5 (このIDを非表示/違反報告)
- んー、2回もヒロインに告白させるのは北さんぽくないなぁ、、、せめて2回目は北さんからの方が綺麗なお話になっただろうに少し残念です。 (2021年8月9日 9時) (レス) id: c2c5a94e17 (このIDを非表示/違反報告)
パルム(プロフ) - 、さん» 教えてくださってありがとうございます!私自身もともと機械などに疎いのですが、うらつくが好きなので投稿させてもらっている次第でした。自分なりに調べてみて、今は外したことになっています。正直すごく不安なので、教えてくださると幸いです。 (2020年8月16日 6時) (レス) id: 7103dc21f5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:パルム | 作成日時:2020年8月16日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。