05 ページ5
.
〜貴方 side〜
小学6年生の夏だった。
てつくんと研磨と、近所の夏祭りに来ていて
3人でお小遣い握りしめて屋台を見ていたんだ。
浴衣を着て。
それが、すべての元凶。
「A……？」
最初に気がついたのは研磨。
少し歩幅が小さくなっていた私を
先に歩いていた研磨が振り返って
その隣にいたてつくんも振り返る。
「足痛い？」
『……うん、ごめん』
「マジか。研磨、これ持って」
「ん」
『え？』
慣れない下駄を履いてきてしまって靴擦れを起こしてしまったんだ。
てつくんは持っていた荷物を研磨に預けると、
『わっ』
私のことをおんぶした。
「とりあえず座れるところ探そう」
「あっちにあった気がする」
『……ごめんね』
「いいって」
てつくんと研磨は短く話すと、屋台から少し離れた場所を目指した。
……大きな背中。
夏だから、くっつくと熱いけど
それは気温のせいなのか
嬉しさと恥ずかしさで体温が上がっているからなのか
子どもの私には分からなかった。
ちょうど座れそうな神社の石の段差のところに下ろしてもらう。
『……重かったよね、』
「んー？ 全然。それより足」
「……血出てる」
「あら。研磨絆創膏持ってる？」
「持ってるわけない……Aは？」
『ない……』
「買ってくるかぁ」
「じゃあおれ、Aのたこ焼き買ってくる」
『え、あ、』
「ん。Aすぐ戻ってくるから待っててな」
てつくんは私の髪を優しく撫でて、研磨と小走りで向こうに行ってしまった。
そのすぐ後だった。
『……ん、っ！！』
背後から誰かに口を塞がれて
気がついたら担がれて人がいない場所に連れ去られたのは。
『……っ、』
「痛いことされたくなかったら声出さないでね」
汗を滲ませながら笑う知らない男の人。
その人は私の上に跨って＿＿＿＿
「気持ちいいね」
「かわいい、大丈夫だよ」
「痛い？ ごめんね、もうちょっとだから」
無理やり、乱暴されたんだ。
泣いても泣いてもやめてくれない。
気持ち悪い。
助けてほしい。
途中で私は気絶して、気がついたら病院にいた。
てつくんと研磨が頭を下げに来たのは
私が目を覚ましてすぐだった。
きっとふたりは
この事件のことをずっと気にしている。
もう忘れてもいいのに。
私なんか放っておいてくれてもいいのに。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 470人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ChachaY - ストーリがもう最高です！！黒尾大好きなのでとっても満足しております！なんか言葉に出来ないほど好きです！これからもがんばってください！ (2月10日 19時) (
レス) id: f1e76f7be4 (このIDを非表示/違反報告)
ウォン(プロフ) - 更新うれしいです！これからも応援しています！ (2月6日 3時) (レス) @page29 id: 120d94ae6d (このIDを非表示/違反報告)
そらと。(プロフ) - 初コメ失礼します！夢主ちゃん可愛すぎません！？私得すぎる...これからも愛読させていただきます...！頑張ってください！ (2月3日 12時) (レス) @page17 id: ea9d7cae20 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハルカ | 作成日時：2024年2月1日 0時
