手を、2【五条悟】

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〜夏油 side〜

あぁ

この時が来てしまった


来ないわけがなかった


覚悟はしていた



そのはずなのに




「……離れ難い、なぁ……」




この子をここにずっと置いておきたいと思ってしまう。

ぎゅう、と腕に力を込めてAを抱きしめた。


これがAの幸せなのに。

Aは悟といるようになってから頭痛の頻度が減って
もう私はお役御免のはずなのに。




好きな人と一緒にいる


たったそれだけのこと。

だけどそれは、Aと悟が前世からしたくてもできなかったこと。



ふう、と息を吐いた。




「……A、悟と幸せになるんだよ」

『っ、……うん、っ』




それからAが出て行く日まで
Aは悟の家に泊まりに行かなかった。

悟からの計らいだったらしい。

「傑寂しんぼだから、最後くらいいーよ」とAに言っていたと後で知ったときは「どっちがだよ」と喧嘩になりかけたが

まぁAが出て行くのが寂しくて堪らなかったのは事実だしそれ以上は何も言えなかった。







キッチンで洗い物をしながら、
ソファーで眠るAを見る。



明日、Aはこの家からいなくなる。


と言ってもものが大幅に減るとかそういうことはなくて
必要なものは悟が新しく買い足したし

どうせ頻繁にここに泊まりに来るから、と割と何もかもそのまま。

仕事もこのまま続けるみたいだし。


本当に明日この子は出て行くのか、と疑問に思うくらい。



洗い物を終えて手を拭き、私はソファーの横に膝をついた。



穏やかな寝顔。




その唇に


触れるだけのキスを1回。




「……愛してるよ、A」




悟と、幸せになってね





これは私からAへの




10年以上拗らせた呪い。




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