彼女はもともとⅢ (ページ10)

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悪夢の青色ページ10

『はっ…はっ…！ママ…！ママ！！』

冥土さんこと松尾花の本当の仕事は、みんなが寝静まった夜に、悪夢に魘されるテウ様の面倒を見ることから始まる。

悲鳴を上げるテウ様の手を握る。
手汗でべとべとの手をしっかり握るも逃げていく手

奥からランタンを持った新人、カミラが顔を出す。

「どうしました？」

「…いつものです。」

いつもの悲鳴。いつもの悪夢。いつもの現実
助けたくても、助けることができない。

『やだ！ヤダまま！！』

「これは、彼女とこの家族の問題で、私達が口出しできるものじゃない。」

わかってるのに、力になれないか、今も模索している。

それは、一般的にはいいものとは言えないだろう。

「…」
「…あんたは、ただ捕まったわけじゃないだろう。」

ぴくっと固まる体を見て、確信した。

「秘密は秘密のままがいい。」
「それは、みんな同じさ。」

好き好んで過去を話す奴らもいるが、本当の秘密は自分の胸に秘めるものだ。

「…言ってる意味が、わかりません。」

「おいおい、何年人を見てると思ってるんだ。」

あんたがどれだけ化けても、その声と、目の奥の対人恐怖と恋慕は隠しきれない。

「かなりわかりやすいぞ。隠すならそれも隠さないとな。」

汗でベトベトの頬を撫でてやると顔をそらす。

気まずい空気の中誰にも言わない、言えない考えを、テウ様の将来を任せるこの人に告げた。

「私は、テウ様…
Aが荘園に向かうまでずっとそばにいた。」

その話は、彼にとって興味を引くものらしい。
姿勢をピンと伸ばして、話を聞く体制になる。

「そんな姿勢をしたって、話さないよ。
彼女の信用を失うことは私はしたくない。
ただ、あんたらの力になりたい。」

私には夢がある

「私はテウ様が、幼いときからお使えしていた。
テウ様が生まれる前は私は物心つく前だ。

母の、お墓参りに行きたい。」

テウ様が、この家族からみんなを逃し、二度とこんなひどいことを行わないように殺害しようとしているのを夢としているように

私は、この家から出ていき、日本に帰って母のお墓参りをしたい。父に親孝行をしたい。

「もう私はテウ様のお世話はつかれた。
だから、
お前たちに任せたい。
そのためなら、自分の生命も捧げる覚悟だ。」

覚悟を決めているその目は、私の意思を確固たるものにしていく。

「改めて、私の名前はAngela。
あんたの名前は」

「僕の名前は───」

悪夢のようなこの家に、微かな希望を。

光を