彼女はもともとⅢ (ページ38)

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調香師の仕事ページ38

「〜♪」

ぶぉぉと音がなる。
私に部屋はない。
女子の部屋にお泊りをして、お祈りを捧げ、まっとうな日常を過ごしている。

「大きなタオルとドライヤー、ブラシと櫛でとかしましょ」

灰色かかった金髪が揺れる。
一度、髪を乾かしてもらったときに聞いた歌だ。

「ブラシで髪を整えて」

髪は一度も絡まることなく、スルスルと整った。
「やっぱり割れ物みたいね。」
と口に出した彼女の部屋は相変わらずいい匂いが漂っており、しかし急いだのか、瓶が割れていたりしている。

「美しいわ。あなたは本当に。恵まれていて」

この血の通わないこの肌を
灰色のような金髪のようなこの髪を
どのように見たら私を美しいなんて言えるのだろうか。

『美しくない。私は恵まれてない…なにも』

「それ、私に言う?」

両親から愛されなかった。
姉に愛されてたけど満たされず
姉に成り代わった私に

異様な雰囲気に私は何も答えられない。
ただただ謝るだけ。
夜の風は私の体をブルリと震わせた。

『…ごめんなさい』

でも、私は私が怖い。
人間じゃなく、本当の人形になった気なして。

『どうしてウィラは私のことを構ってくれるの？』

「理由がないといけない?」

そういうわけではないけれど…と借りた服の裾を握った

「そうね、強いて言うならあなたが大好きだからよ。」

やさしげな顔をして、天使の微笑みで彼女は笑って私をなでた。

優しい匂いが私を撫でる。
優しい手つきは妹のなで方にそっくりだった

『ウィラって変わってるわね。』

「よく言われるわ。でも、それがあなたに向けた感情のことを行ったのなら、ここの人たちみーんなかわってるわ。」

いたずらっ子が母親に笑うかのような無邪気な笑みで私に微笑む。

『私は、私を好きになれない。』

「あら、でも私は好きよ。」

きゅっと口を噛みしめると彼女はわたしの唇を優しくなぞりながら

「あなたがあなたを好きになれなくても
私はあなたが大好き。私があなたがあなたを大好きにさせるわ。」

なんて言う

『……』

コンコンと控えめにドアが鳴る。
ウィラが返事をするとフィーが来る。

「お薬持ってきたわ。」

重りがついていた足に塗る。

「よかった、私達がちょうどお風呂に入ってるときで。」

私は何も良くない。

「痣は治るって言ってたわ!」

心底ホッとしたような
赤ちゃんを見たときのあの母親のような

そんな顔で私に「良かったわね」と微笑む

心底ホッとしたような、そんな顔で
寝るときは子供のように手を繋いで寝た。