彼女はもともとⅢ (ページ31)

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さーん。ページ31

「3歳のテウちゃん、君はどんな家で生まれたの?」

よくわからない落ち着いた音楽を聞きながら、弟に似ても似つかないはずの彼女に姿を合わせていたのは事実だ。

子供は嫌いだ。うるさいし、言う事聞かない。
現に幼児退行した彼女は僕に突っかかっては負けていく。

『テウはお兄様たちとお姉様たちとお父様とお母様と一緒だった。』

なのに彼女は、黙ったままで。何がしたいかわからないし。
もう少し年相応の女の子として生きてもいいのではないか。

それが、自分の思いであり、考えだった。

「兄弟がいたの?いいな、何人いたの?」
『兄弟なんかいらないよ。12人。いい人達だよ』

すべてを持っているのに彼女はすぐ逃げる。
歪でも、いいじゃないか愛されてるのなら。

「そっか。その12人は君を含めて?」
『んーん？ベスも入れて12人。テウは10番目なの』

「ベスは妹さん?」
『んーん！ベスは犬だよ、ミラが妹』

可愛くてね〜！と
寝ている状態だからこそ、このような明るく馬鹿みたいに振る舞うのだろうか。

「今君は何をしてるの？」

『今はお姉様に抱っこされて寝室まで向かうの。
ご飯を食べさせてもらったからお腹いっぱいで、お兄様にお風呂を入れてもらったからぽかぽか。
ミラが待ってる。ベスと一緒にお布団に入ってる』

笑ってるようなフリをして楽しくなさそうな雰囲気だ
そんなことをして

「今の君は幸せかい?」

『しあわせ、しあわせだよ〜黙っていればちゃんとかわいがってくれるもん』

好きだから幸せ、愛してるから幸せ
馬鹿馬鹿しいと言いたくなるほどふにゃりとわらう彼女が嫌いだった。

「……ジョゼフ。手が」

力が込められたのだろう彼女の手は力いっぱい握られても握力はないし爪はちゃんとしてあるから痛くはない。
でも、異様なほど震えて汗をかいている。

「…嘘はいけないな。お仕置きされたいかい?」

カタカタとかすかに震え、彼女は謝った。

『ごめんなさい、ごめんなさい、でもそう言わないと』

ころされる。

はっきりと言う彼女を落ち着かせるように別の質問を投げかけても、3歳の彼女は

『幸せですって言わないと、殺されちゃう。』
『幸せですっていわないと、ひどい目に合う。』
『いたいの嫌だ。』

……あぁ哀れで可愛いそう。
ビスクドールのようにも見えてくる彼女に別れを告げる。

「3歳のテウちゃん、またね。」

『会いたくない。』

この彼女ははっきりと第三者を拒絶した。