彼女はもともとⅢ (ページ4)

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メイドさんページ4

冥土さん、と私が呼んでいる人がいる。

冥土の人に似ている顔の人。
やけどのあとが痛々しいけど、とてもかっこいい人。

「テウ様おかえりなさいませ。」

この人は表情をあまり表に出さない。
左手が壊れてしまったのだ。
私のせいで。

『ただいま。この子、私のお友達。
引き継ぎ、だって。』

沈黙を破るように、冥土さんはそうですか。と笑う。

にほん、という国から来た冥土さん。
もともとはとても美しい黒髪につり上がったやさしげな目だった。

旅行に来たのが最後で、そこからは私が産まれる前からここに使えている。

「Camillaです」

「ハナ。テウ様にはメイドさん、と呼ばれている。」

引き継ぎは目の前で行われる。
大半が、口頭。その後は実際に見て学ぶ。

その後は何がある変わらないけど、引き継ぎの終わった人はもう二度と姿を見せなくなる。

「テウ様、引き継ぎを行う、という事は私にもお暇をくださるということですか？」

だめ。と私は懇願をした。
私は知っている。
居なくなった人たちの最後を。

『冥土さんはお願い、Aと一緒にいて、お願い、どこか遠くに行かないで…』

逃がすから。助け出すから。

そう懇願をすると、大きなため息をついて
「旦那様と交渉してみますね。」と微笑む。

『離れないで。』

「お側にいると誓ったじゃありませんか。」

神の契。というものがある。
これは、いくら、兄弟であろうと、家族であろうと破る事のできない神の近い。

『誓ったから、離れないで』

困ったように笑い、駄々をこねる私の頭をなでて跪く

「さて、テウ様お食事のお時間ですよ。
確か、時計は7時を指しておりました。」

置いてけぼりのカミラの手をきゅっと握って、両手を広げれば冥土さんは、私を抱きかかえる。

「良かったな、カミラ。テウ様に選ばれて。」

その言葉の意味を理解できてないようで、彼女は、キョトンとして私を見つめた。

「テウ様の身長も、体重も年相応じゃないのはこういうことさ。」

テウ様の移動の際は抱きかかえて移動が基本だ。

メイドさんの言葉に今まで忘れていた幼少期を思い出した。

矯正
躾
暴力
洗脳

10年間の時が再び動き出した気がする。

この家にいると、どんどん私が壊れていく。
気が狂っていく。
頭がおかしくなっていく。

だってそうでもないと、慣れたはずのこの家に恐怖心なんかないはずなのに。震えなんかないはずなのに。

メイドさんは、私の頭を撫でて少し寄り道しましょう、と提案した。