彼女はもともとⅢ (ページ30)

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私は隠れるから！ページ30

「催眠医師でしょ。」

「衣装の恩恵って素晴らしいね。」

「えぇ、私も思うわ。」

寝台で小さく呼吸をしながらすやすやと眠るすすだらけの彼女をジィっと見守っていた。

「退行セラピーね…暴れるんじゃないの?」

彼女を優しく撫でながら声だけをこちらに向けて話す
やさしげな瞳で見ているヤツを見ていると、こいつ本当にハンターか?と疑問に思ってしまうほどだ。

「ナワーブみたいに何が起こるかわからないよ。」

「仕方ないじゃない。みんなゲームなどで出払ってるの。」

医師であるエミリーダイナーが赤い衣装を着てる時、先生と催眠医師は仲が悪くなる。

「じゃあ」

あんたで良いから彼女の手を握ってやりなよ。

「っえ…」

急にこっちに話を降るとは思ってないから変な声が出る。あいつは怪訝そうに顔を顰めながらこちらを見た。

「これ。一応彼女のトラウマとかを抉るもんだから…一緒に耐えてやってよ。」

やさしげな目でAを見ながら一応こちらにも視線を向ける。

試合のあの鋭い目とは全く違う。

「…」

そっと背を押され、Aの前に立ち手を握ればやんわりと握り返す冷たい手
割れ物のようでドキドキしながら少し力を込めた。

戦場に行く前の自分の手に似ている。
死ぬのが怖い。仲間が消えるのが怖い。
でも、家族のために…

〈裏切り者。〉

ズクリと心臓が痛んだ

「じゃあ、先生。」

「先生に先生って言われるの変な感じ。
メモをしっかり取ってよ。」

「わかってるわよ。」

カチカチと2度ペンを鳴らせば机に向かった先生。

「頑張れよ。A」

握った手を口元に持って行く。
自分の手の熱が全て取られたのに、それでも冷たい手をどうやったら暖められるのか。

頼む、頼むから生きてくれ。
帰ってきてくれ

はじめるよ、と部屋の明かりを暗くし
よくわからない落ち着いた音楽をしばらく流しながらあいつは口を開いた。

「こんにちわ、君は誰?」
『テウ』
「いくつ?」
『6歳。』

彼は適切な言葉を噛み崩しながら言葉をかわす。

説明を終えると、ベッドの隣の椅子に座る。
はじめるよ、とアイツはポツリと呟いた。

「僕が年を数えていくよ。
数にあわせて君も若くなっていく。
5,4,3…君は今三歳だよ」

「3歳の君は何してるの?」

『…』

あぁ、挨拶をしてなかった
彼はわらって、彼女の顔を見ながら挨拶を交わす。

「こんにちわ、3歳のテウちゃんはじめまして。」

眠ってるAは、意識が朦朧としているのか
『こんにちわ』と言っていた。